亀の湯を出発したが、もう空腹は耐え難いほどだった。
これから霧島の方へと向かって山を登っていくことになるが、果たして私たちはお昼ご飯を食べることができるのだろうか。
ここから先、温泉ならばいっぱいある。
とにかく次へ移動しよう。
霧島連山は鹿児島県と宮崎県にまたがる火山群で、九州自動車道と宮崎自動車道と国道223号線を繋いでぐるりと周りを囲むように主要な道路ができている。
この火山群には新燃岳や御鉢など今も活発に火山活動を続ける峰があり、中でも新燃岳は4年近く前の2011年1月にも大きな噴火を起こしニュースとなったことも記憶に新しい。
霧島連山の最高峰は韓国岳(標高1,700m)で、朝鮮半島の国 韓国由来の名前のように見えるが、wikiによれば登山道が難路で、山頂付近の草木も乏しいことから、「空虚の地すなわち空国(むなくに、からくに)あるいは虚国(からくに)」から来たという説が一般的であるようだ。
私たちがいまいるのはえびの市の西のはずれで、九州自動車道の外側になる。
そして今晩泊る湯之谷温泉の湯之谷山荘は、霧島温泉郷の東側にある一軒宿。そろそろこちらの方角に車を進めなくてはならない。
ちょうど私たちがいる方角から霧島方面に向かうと、霧島温泉郷の中でもぽつんと北西に外れたところに建つ一軒宿、栗野岳温泉南洲館を通る。
一応ガイドブック系のサイトを見ると、南洲館で昼食を取ることもできるようなことが書いてある。
もしかしたらご飯が食べられるかもとささやかな期待をしながら南洲館へ向かった。
ループ橋の辺りで雪雲が湧いていた空は、いったんはまた青空に戻り、そして今再び垂れこめたような重い雲に包まれていた。
日が陰るととたんに風が冷たく思えるなぁ。
栗野岳温泉南洲館は山の中だった。
道路から見えた看板には「名所 八幡大地獄」とか「名物 とりの丸蒸し」とか書いてある。温泉の蒸気で鶏を蒸すらしい。
たぶん辺りから白い蒸気が上がっているんだろうけど、あいにくと山のあちこちに低く降りてきた雲が蒸気のごとく掛かっていてどれがそうなのかよく判らない。
駐車場に車を停めてえーと、あれ? 受付はどっちだ? あっ、立札があったと迷いながら母屋の玄関の戸を開けた。
宿の規模と比較して、母屋の入り口はどことなく民家のような雰囲気だった。