車だとぐるっと回る感じだが、宿泊者は通路から直接行かれるのだろう。駐車場のある浴室棟は裏口という感じだった。
というか、本当に裏口?
「いや、そこは違うだろう」とパパ。温泉棟に入る入り口はもうちょっと先のようだ。
確かに建物に沿って進むと大きくは無いが綺麗な入り口があった。
そこは湯上りラウンジという場所で、壁のほとんどがガラス張り、籐の椅子と洒落たテーブルを何組か置いたリゾート地のカフェにもバーにも見えるスペースだった。
窓の外には紅葉。そしてたぶん窓に近寄れば渓流も見えそう。
紅葉!?
12月も終わり近いのに。
ラウンジはとても綺麗で洒落ていてでも誰もいなくて、カウンターも無人だったので本館の受付で聞いた言葉を思い出し、私はカウンターにチケットを置いて浴室の方へ進んだ。
「あっと、待ち合わせはどこで? このラウンジでいい?」
「車に戻っているかも」
ああ、了解。
いそいそと廊下を進み、女湯とある戸を開ける。
明るく清潔そうな脱衣所。湯気でぼんやりした浴室の中には先客がいる模様。
あれ? ところで露天風呂はどこなんだ?