妙見石原荘は今回の鹿児島旅行を企画するより以前から、名前だけは知っている。
九州の温泉に疎い自分でも、雑誌に特集されたり温泉サイトなどで話題に上ったりしていたのを十数年前から見ている。
最初は「みょうけん温泉」が読めなくて、「たえみ温泉」だとばかり思っていた。
妙見石原荘は和風旅館というわけではなく、和洋折衷というか、和モダンというか、敷地内にどことなく中世ヨーロッパのような雰囲気を持つ石蔵の客室などもある。
玄関前にいきなり車で乗り付けてもいいものか迷いながら車を停めると、早速宿の人がとんできて、本日のお泊りでしょうかと慇懃に尋ねてきたので、日帰り入浴を希望していると答えると、どうぞ受付は本館の中ですとさししめされ、取り急ぎパパを置いて私だけ車を降りた。
ガラス張りの自動ドアの中に入ると、決して豪華というわけではないが、こだわったデザインを感じさせるロビーがあった。
受付はホテル風な感じで、鹿児島にしては別格の日帰り入浴料一人1,200円を払うと、敷地内の地図を出してお風呂の説明を始めた。
「現在地がここで、いったん車で道路に出てもらって少し戻るとバス停があるのでそこを曲がって下さい。すると駐車場がありますので、駐車場の先の天降殿という建物にお風呂の受付がありますので、そこにチケットを出してください。誰もいないことがありますが、その時はカウンターにチケットを置いて、そのまま入浴してもらって結構です。大浴場がここで、女性用の露天風呂がこちら、男性用の露天風呂がこちらになりますが、男性用の露天風呂はまだ清掃中ですので、あと10分ぐらいしてからご入浴ください」
「ここにももう一つお風呂があるんですか?」地図の一点を指差して聞くと、
「そちらは貸切露天風呂となっております」
あっ、失礼。別料金なのね。
何だかごちゃごちゃしてわかりにくいけど、とにかく駐車場と、浴室の受付さえわかればあとは何とかなるか。
車に戻って説明しようとすると、パパはもうお風呂への行き方が判っていた。
後で知ったけど、最初に近づいてきた宿の人に、私が受付に行っている間に教えてもらったらしい。