15.前代未聞の豪雨と雷鳴に追われて
新千歳から登別までは車で約1時間程度。
走り出した時は激しいとは言うもののまあ普通の雨だったのだが、高速に乗ってすぐにとんでもないことになった。
バケツをひっくり返したようなという表現があるが、例えて言うならもう風呂の底が抜けたような。
なんじゃこりゃーと目が丸くなるほどの激しい雨。前が見えない。
風呂の底じゃなくて天の底が抜けたんだ。
雨自体もとんでもなく激しいが、その激しい雨で車内の湿度が急速に上がりいきなりフロントガラスが曇り始めた。
パパは慌ててデフロスターのスイッチを探した。
あれ? あれ? あれ?
自分の車じゃないからどこにスイッチがあるのかわからない。
高速道路上なのでスピードも出ている。止まるわけにもいかない。
しかしまったく前が見えないほど曇っている。
慌ててハンカチを出して内側から拭いたが、拭いても拭いても拭いた後から一瞬にして曇っていく。本当に何にも見えない。
前の車のライトが光っているだけ輪郭は無し。何がどこにあるやら。
どどどどうしよう~。
とにかく一番近いパーキングエリアに入ろう。このままじゃ危なすぎる!!
ぎゃーーーー。
猛スピードで高速を走る車は何度も何度も新たな荒ぶる雷雲の下を潜りながらようやく登別に着いた。
高速を降りると夜の闇の中にぬっと棍棒をつかんだ赤鬼の像がようこそ
登別温泉への文字の上に立っていた。
登別は降っていなかった。
雷の音もいつの間にか絶えていた。
ところでこの雷雨がとんでもないレベルだと知ったのは翌朝。
朝の北海道のローカルニュースで前代未聞だとキャスターが言っていた。