3.沼尻にカナが泣く
露天風呂はいい雪見風呂になっていた。
今日は悪天候だと思ったのに、いやいや沼尻についた時だって雪は降り続いていたのに、どういうわけか露天風呂に出たら、うそのような青空が広がっていた。
すごい、真っ青な空だ。いつのまに天候が変わったのだろう。
お風呂はちょうど雪の窪地のような感じで、四方に雪が積み上げられているが、周りの木々は雑木林ではなく、実は庭園らしい。あちこちの木に雪吊りがしてあるので気がついた。違う季節なら庭を見ながら入る露天風呂なのだろう。
露天風呂のほうが内湯よりさらに熱かった。でもレナも一度入れてしまえば喜んで入っている。温まると雪をとってきてはまるめて遊んでいる。静かだなぁ…。
とても強いお湯だと思う。肌にも刺激が強いが、味など猛烈に酸っぱ渋い。酸っぱいのは予測していたが、こんなに渋いとは…思わず、入れ歯を外したばあちゃん口になってしまいそう。
男湯から、「カナ、大丈夫だから来てご覧よ」というパパの声。
…もしかしてカナ、入りたがらない?
パパ、手こずっているのかも。
まだ出ないというレナを急かして上がってみれば、カナは半泣き顔でパパのコートを羽織っている。
痛がって入らないんだよ、とパパ。
…。
本人によく聞いてみると、お湯に入ったときのぴりぴり感が耐えられないらしい。どこかに傷があってしみるとかそういうわけではなく、酸性泉に入ったときの感触が怖いのだ。
9月に
川原毛大湯滝に行った時も、大泣きしてほとんど入らなかった。あれも傷が痛んだわけではなかったのだとようやく今悟った。
先日の草津は平気だったのになぁ。
でも確かにここは草津よりもっと刺激的かもしれない。
今後、彼女を酸性泉に連れて行くときは考えなきゃいけないかな。
ほとんどお湯に入れなかったカナは、寒がってパパのコートを着たそうだ。カナが泣くのでパパもほとんど入れなかったらしい。それは可哀想に。
濃い酸性泉で、どっと湯上り肩に重いものか乗ったような感じだ。重い浴感。
沼尻温泉、強烈。