みなさん、こんにちは。前回はそろそろシルトホルンから下ろうとしているところで幕でしたね。さて、今回はどこまで進めることができるのでしょう?
 これまた少し前のことですが、義母がトルコ旅行に行きました。今回はパックツアーで、同行者はお友達、スイスに次いで二度目の海外旅行になります。
 とても楽しかったようですが、朝早くからバスで観光地に向かい、毎日移動でホテルを変えていたのが少々せわしなかったようです。食事は断然スイスの方が良かったと言っていました。私たちはグルメな旅もしてないし、ほとんど夕食はホテルの二食付きにお任せだったんですが、義母の口には合っていたよう、
 トルコは一度で十分だけど、スイスにはまたぜひ行きたいわと言っています。
 でも私も一度はイスラム圏に行ってみたいなぁ・・・。


*** アルプスは今日もお天気 ***

第26話 さて下りの道行きは?の巻


 お腹もいっぱい、景色にも大満足だった私たちは、ようやく下りのロープウェイに乗り込んだ。ところが中間駅のビルクが近づくと、なんと三山につきまとっていた切れ切れの雲がいつの間にか全て吹き払われているではないか。
「ダ、ダンナぁ」
「なんだ?」
「お願い、ビルクで途中下車」
「え〜?!」
 どちらにしろビルクではいったん降りねばならないのだが、ここでまた接続する便に乗らず、少し時間を過ごすことにした。
 ビルクは、ミューレンとシルトホルンの間の突き出した大岩の上に乗っている展望台だ。メンリッヒェンあたりからだとその様子がよくわかる。シルトホルンのように360度の眺めは楽しめないが、アイガー、メンヒ、ユングフラウの3山の迫力は素晴らしい。
 お昼過ぎなので既に太陽は真上で、写真を撮る光線状態はけしてベストではないのだろうが、降り注ぐ陽光で気持ちの良さは倍増である。
 ビルクの建物は007にも登場するが、全く同じ形なのに映画では外壁がオレンジに、今はブルーに塗られている。余談だが007にはラウターブルンネン駅前なども登場する。結構古い映画だろうに、建物も景色も雰囲気も今と寸分たがわない。日本の観光地だったらとてもこうはいくまい。

 観光客はみんなのんびりと、ドリンク片手に日光浴だ。山々は本当に絵のように美しい。とてもその間に横たわっているのが大気だけだとは信じられないくらいだ。
 ここを下ればまた雲の中。明日には移動してしまうから、おそらくこの光景は見納めなのだ。せめて思い出を心とフィルムに焼き付けていこう。

 さてその後ようやくロープウェイでミューレンまで下った我々だが、
「きゃー、可愛〜い」ロープウェイ乗り場の前の広場では大人しそうなおっきな犬が出迎えてくれた。繋がれているが、飼い主は見あたらない。近寄ってなでても人なつこい目を向けるだけだ。
 ダンナは犬猫が苦手だ。水鳥系には喜んで餌をあげるのに、犬は小さくてもまず近寄らない。
「こんなに大人しいのにね」
 私と母は寝そべっている犬に相手をしてもらいながら笑いあった。

 ミューレンはまだ雲に閉ざされていた。のんびりとBLMの乗り場に向かって村を突っ切る。朝にはまだ眠っていたこの村も、そろそろ賑わっているかと思いきや、ちょうどお昼休みタイムだったらしい。お店は軒並み閉まっている。でも朝と違ってウインドーや道ばたは賑やかになっている。薬やさんだか雑貨屋さんだかの店の前には、籠に入ったたくさんの石鹸類。土産物屋さんの前には絵葉書のラックと小袋入りの高山植物の種。おおっ、こっちのウインドーではロープウェイの模型が動いているぞ。
 道を歩いているうちに、お昼休みも終わったようだ、商店街が切れる頃に一軒のお店がドアを開けた。ハローと言って入ってみる。カラフルなセーターや帽子が並んでいた。美人のお姉さんが二人、ディスプレイをなおしながら挨拶してくれた。

 BLMの駅のそばまで来た。名残惜しげに振り返ると、時折薄くなる雲の向こうに山の姿がかいま見えた。黒っぽいその姿はユングフラウのドレスの裾あたり、シュバルツメンヒだろうか。

 BLMに乗って、崖にへばりつくように造られた線路を行くと、行きにも見かけた線路沿いのハイキングコースを今は沢山の人が歩いている。みんな手を振ってくれる。こんなに天気が悪いのに、こんなに人がいるということは、このコースは本当に人気があるのだ。山は見えなくても靄の中のお花畑も幻想的でいいかもしれない。

 さらにケーブルカーに乗り換えて、ずんずん山を下っていく。
「これからどうする?」とダンナ。そういえば何も考えていない。
 下ってしまえばもう何も景色は見えない。ちょっとやそっとの高さでは雲を抜けることができないのは実証済みだ。
 お天気の悪い日はショッピング。やはりこれが原則だろう。
「じゃあ、最初の日に予定していたグリンデルワルドまで行くか?」
「いや、ここから移動するなら絶対インターラーケンの方が早い」と私。
「いったんホテルに戻って荷物をおいて、もしお母さんが疲れていたらホテルにいてもらって、お買い物に出かけるというのはどうかしら」
「だけどなぁ・・・」とダンナは時刻表をめくる。
 私たちはいつも必ず、使う可能性のある時刻表の該当個所と、通る可能性のある主要駅の見取り図と、泊まるホテルの連絡先を縮小コピーして綴じた物を持ち歩いている。
「本数が少ないからホテルに帰らずに、まっすぐラウターブルンネンから乗り継いだ方がいい。いったん戻ると1時間のロスだ」
 しかし母が・・・と振り返ると、
「あら、お買い物なら私も行くわよ」と疲れた顔も見せずに言うのであった。まこと海外に来た女性とショッピングは切り離せない・・・。

 そんなわけで、突如として9月4日の午後の予定は、インターラーケンでお買い物と決定したのである。

 私とダンナはそろって真夏の8月生れ。スイスでお互いに欲しいものを贈り会ってプレゼントとする事を決めていたのですよ。
 さてさて次回はバースディプレゼント、ゲットなるか。お楽しみに。

続きを読む一つ戻る目次へ戻る今日はここまでにしてTOPへ戻る