10.折れたヌードルとライフジャケット
押し問答をしているうちに私たちはラストになってしまった。
もうみんな次々とシュノーケル三点セットを身につけ、ヌードルと呼ばれる棒のように細長い浮き具を抱えてどんどん海に入っていく。
「あれ? ライフジャケットは貸してくれないの?」と私。
三年前の
ミコマスケイの時は無料で貸してくれたのに。
「無いみたいだよ」と冷たいパパ。パパは泳ぎが上手いのでいつも浮き具を必要としない。
「・・・判った。ライフジャケットが無いなら子どもたちの分は空気を入れて膨らませるライフジャケット型の浮き具を持ってきたからそれを使うよ」
早く海に入らないと自由時間がどんどん少なくなってしまうという焦りに狩られながら、私はまた二階のデッキに戻り、ビーチバッグの中からそれを探し出して膨らませた。
この浮き具を私は「なんちゃってライフジャケット」と呼んでいるが、100円ショップで手に入れたもので沖縄でも重宝した。一応空気を入れるところが三箇所に別れているので万が一どれかの空気が漏れたとしてもある程度の浮力を保つことができる。
もちろんちゃんとしたライフジャケットがあるに越したことはないが、少なくとも一箇所穴が開けばお陀仏の普通の浮き輪よりはリスクが少ない。
さあ子どもたちの浮き具はなんとかした。
あとは自分の分のヌードルだけだ。