「この森に足りないものがあります。何でしょうか?」
「花」と即座に私。
「そうです。この森には花がほとんどありません。そこがまた
ケアンズ周辺の熱帯雨林の評価が高いところでもあるんですが。どういうことかと言うと、この森はそれだけ古い森だということです。花をつける被子植物が地上に生まれる前の、貴重な裸子植物の森なのです」
足下に寄生植物が落ちていることもある。
また、寄生植物が元の木とほとんど一体化しているものや、元の木が枯れて寄生植物だけが空洞状態で残っていることもある。
「植物の世界はこうじわじわと進行するので、動物の世界より嫌らしい面もありますね。ほら、この木は既に枯れている。こういう木には・・・」
willieさんは幹をぐるりと回って探しているものを見つけた。
「これです。寄生されていますね。宇宙人みたいですけど」
古代遺跡に描かれた正体不明の文様みたいな不気味な形が盛り上がっていた。
また、元の木が朽ちて消えてしまった後に蔓状に巻き付いていた寄生植物だけが電話のコードみたいにぐるぐると螺旋状に残っているものもあった。
レナがどれ? と言うので、近寄って指さした。
そのときにうっかりと近くにある別の蔓に指が触れてしまった。
かすっただけだと思ったのにくっついてきて、無理に引き離したら指の薄皮がむけてしまった。
こ、怖い。willieさんのサイトに
スティンギングツリーという猛毒の植物がその辺に普通に生えていると載っていた。まさかこれじゃないだろうけど気を付けなくちゃ。