1.ケアンズ空港の朝
ケアンズ空港の印象は鳥の声。
ガラスのドアを一歩出てあたりを見回せば、森にいる鳥、町にいる鳥、海にいる鳥、木立の葉の間や、街灯の上にとまって啼いている。
成田からの直行便が着く時間、ちょうどオレンジ色の大きな太陽が地平線に近い雲の間から顔を出す。
ケアンズ空港で迎える朝がいつも本当の旅のはじまり。
二日目 4月27日(金)
小学四年生のカナはしっかり目を覚まして自分の手荷物の入った小型スーツケースを引きながら歩いたが、二年生のレナはまだまともに目を覚ましていない。半分寝ぼけたままの彼女の手を引き、狭い機内から出て早足で入国審査の列に並ぶと、もう先に着いていたパパが誰かと話をしていた。
相手もやはりカナぐらいの子供をつれた家族。
知り合い?
「俺の高校の友達。偶然ばったり会って」
しかしこの日時にここにいるということは、やはり子供の小学校は休ませたのだろう。同類だ。
「どこに泊まるの?」
「
ミッションビーチだよ」とパパ。
「ミッションビーチ、ああ」と相手の奥さんが思い出すように言った。「去年行ったじゃない私たちも」
「レンタカーで?」
「そう。そっちも?」
話しているときは思い出さず初めましてみたいな挨拶をしてしまったが、後でようやく思い出した。10年ぐらい前に私も一度会ったことがあった。あの頃はこちらも子供はおらず、あちらはまだ結婚もされていなかったはず。
彼らはまた途中で会うかもしれませんねと言って荷物のターンテーブルのところで別れていった。
旅の途中でタウンズヴィルからエアリービーチまで南下するのだそうだ。
我が家よりよっぽど行動的だ。