12.ネムレナイ機内
消灯時間になって機内の灯りが消されると、私も眠ることにした。
何故か足を降ろしたままでは眠れない私は、狭い機内で寝るのはいつも苦労する。お行儀が悪いと知りつつも、テーブルを出してその上に乗せてみたり、前列のシートバックについているポケットにかかとを突っ込んでみたり・・・。
椅子の上で足も持ち上げて丸くなって寝ていると、ぎりぎり体はすっぽりはまるのだけど、流石に寝返りをうつ余裕は残されていない。体が寝返りをうとうとする度に目を覚ますことになり、結局1~2時間ごとに目を覚ましていたような気がする。
夜中に目覚めたとき、パパがヘッドホンをつけているのが見えた。
何だろうと思ったら、映画が上映されていた。ナイトミュージアムだ。
知らなかった。二本目の映画は消灯後に時間をおいてこっそり上映されるものだったのね。今まで行きは一本しか流さないのだとばかり思っていた。
ナイトミュージアムは見たいけど、今は眠らなくちゃ。
「パパは寝ないの?」
「どうせ眠れないから」
そりゃお気の毒に。
お休み。
「今何時?」
「5時過ぎ。あと30分ぐらいで着陸態勢に入るよ」
げげっ、寝過ぎたか。
はい、とパパがバナナを一本渡してきた。
バナナ?
「ほら、機内食メニューにあったじゃん、フライト中に新鮮なフルーツをお持ちしますって。機内の灯りもつける前にCAがバナナ手に歩いてきたよ。ほとんど誰も受け取らなかったけど、あなたのために一本受け取っておきました」
「そりゃありがとう」
パパはバナナが大嫌いなのだ。
着陸態勢に入る前にトイレに行っておこう。
コンタクトレンズをはめるために。
それから席に戻って日焼け止めをぬる。飛行機を降りたときからそこはもうケアンズの日差しだから。
やがて窓の外にまだ夜明け前の
ケアンズが見えてきた。
幹線道路にだけ光のラインが流れていて、何もないところは海さながら真っ暗だ。
機内放送が現地の天候は晴れと伝える。
なんて珍しい。
晴れ一家の私たちだけど、何故かいつも到着時のケアンズ空港はモーニングシャワーなのに。
本当に晴れているの?
滑走路がぬれていない?
この空港の天候がまるで今回の私たちの旅を象徴しているようだった。