11.何故かいつもレネー・ゼルウィガー
ほぼ定刻通りに成田発
ケアンズ行きQF60便は滑走路を離れた。
重力が掛かって斜めに浮くと、やがて窓から成田市街地の灯りが見えた。
旋回して海へ。
海岸線のラインに並ぶ灯りを最後に、後は暗闇。
ケアンズ着は現地時間で早朝5時55分の予定。
およそ7時間半の空の旅。
安定飛行に入るとすぐに映画のプログラムをチェックする。
機内の楽しみと言えば映画と機内食ぐらいだから。
ケアンズ行きの便は・・・ミス・ポッターとナイトミュージアム。
ミス・ポッターは地味そうだけどナイトミュージアムは面白そうだな。行きはひとつしか見られないからどっちを上映するんだろう。
配られる子供用アメニティキットは今年も一昨年と同じThe Wigglesのグッズだった。オーストラリアでは人気のコメディーグループらしいが残念ながらうちの子どもたちはこれを知らない。ちなみにそれ以前は二年続けてディズニーキャラクター、その前はウォレス&グルミットグッズだった。
頼んでおいたキッズ用の食事が運ばれてきたのは10時15分頃。
大人用の食事よりはずっと早いけれど、いつもの生活リズムからしたら遅すぎる。眠いのが半分、興奮して寝られないのが半分の子どもたちは見ただけで食べられないと言い出した。
食べられるものだけでもつまみなよと伝えたが、ほとんど口を付けなかった。無理はない。
こういうときはカンタス系列ローコストキャリアであるジェットスターのように、食事はオプションになっていると無駄が無くていいかもしれない。
大人用の食事はそれから15分ほどして運ばれてきた。
ふふふ、今回は座席を前の方にしただけあって早い早い。
後ろの方の座席の人が、「チキン? ビーフ?」なんて聞かれている頃にはもうすっかり満腹してお代わりのワインが飲めるほどだ。
チキンを選んだ。チキンの味はまあまあなんだけど付け合わせのポテトが酸っぱいのなんの。レモンの味付けなんだから仕方ないけど口をすぼめながら食べてしまった。
映画はミス・ポッターだった。
案の定地味な始まり方だった。
ピーターラビットの作者で知られるビアトリクス・ポッターの青春時代を描いた映画で、主人公のポッターが登場したときにはこんな老け込んだ人がヒロインなのかと思ったほどだ。
でもそれは彼女の垢抜け無さをあえて表現したもので、作中ではだんだん若さが見えてくる。
おや、このポッター役の女優は・・・はにかんだような独特の表情に見覚えがある。
レネー・ゼルウィガー。
ちょっと待て。一昨年のオーストラリア行きの機内で見た映画は「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月」、その前のオーストラリアからの帰路に見た映画は「シカゴ」・・・ドラマだのコメディーだのをまったく見ない私がそんな映画を見るのはオーストラリアの往復ぐらいで、どうして見る度に主人公がこの人なのかと可笑しくなってしまった。
ミス・ポッターのストーリーはありがちで特筆するものは無かったが、背景に広がるイギリスの湖水地方は綺麗だった。
私は湖水地方も、またポッターが買い取り、保存に務めたヒルトップの屋敷も訪ねたことがある。懐かしい景色だった。