12.赤い花咲く大樹と白いコテージ
シンディは子供たち同様早口で、英会話に不自由な私だけでなく、まだオーストラリアに着いて1日目で久しぶりの英語に馴れていないパパも半分も聞き取れたかどうか。
ただ、マムは病気なのという一言だけは判った。
ということは今年の年始には農場の女主人であったサンドラ夫人は休業中。一時的にか恒久的にか判らないが、今は娘のシンディがファームを仕切っているらしい。
彼女は、ちょうど今、子供たちの学校が終わる時間でスクールバスのお迎えに行っていたところなのと教えてくれて、早速コテージに案内してくれた。
嵐のようにシンディ一家が現れて去って、ようやく私たちは荷物を降ろして気が抜けたようにへたりこんだ。
ここでの宿泊は食事付きと自炊と選べるが、今夜と明日の朝は自炊にしておいて良かった。
長い機内拘束時間を終えて、休む間もなくレンタカーで
テーブルランドへ。更に疲れ切った頭ではとても楽しい英会話など交わせる能力は無く、しかも子供たちだっていつ眠くなるか判らない。今日はもう雨の中部屋でゆっくり休んで明日に備えることにしよう。
このファームにはコテージの他にあと二部屋あって、こちらには食事付きと無しの他にフルファームステイという料金設定があり、これを選ぶと農場体験ができるようなことを書いてある。
コテージにはそういった料金設定は見あたらなかったし、アイカンダパークは肉牛の農場だということもあり、たぶん私たちにできるとしても見学ぐらいだろうなと思っていた。
それがとんでもない間違いであると知るのはこのすぐ後だった。
10分もしないうちにシンディとキッズは戻ってきた。
手に、大きなミルク用ペットボトルのようなものを持っている。
「これから赤ちゃん牛にミルクを上げに行ってみない?」