8.カーテンフィグツリー
パーキングには車が何台か停まっている。
まだ霧のような雨が降っていた。
子供たちにフード付きのウィンドブレーカーを着せて連れ出す。
雨の中、外へ出なくちゃならないと聞いて子供たちは不服顔。
手すりの付いた木道が熱帯雨林の中に続いている。
森の中は鬱蒼として薄暗い。
ウィンドブレーカーの袖がぬれて腕に張りついて気持ち悪い。
カーテンフィグツリーまではすぐだ。
ほら。
木立の向こうに天からなだれ落ちる白い髭のように奇妙なものが見えてくる。
ロードオブザリングの木の髭、エント族のようだ。
あのときは夜だったのでよく見えなかったが、今は細部まではっきりと見える。
それは巨大な木から垂れ下がる、滝のような寄生植物だ。
寄生して養分を吸い上げ、やがては養い親を枯らせてしまうという絞め殺しのイチジクだ。
小さいものは
ケアンズ近郊の公園や道ばたでも見かけるが、これほど大きいものは他にないのだろう。
写真を撮るから木の前に並んで、と子供たちに言っても、あまりに背景が大きすぎるのでどう撮っても全容は入らなかった。