1.ケアンズは雨だった
二日目 4月29日(金)
ケアンズは雨だった。
いや、それはいつものこと。
何故かカンタス機がまだ夜も明けてない真っ暗な空港に滑り込むとき、いつも窓の外はぬれている。
たぶんモーニングシャワー、これから朝日が昇るとともに晴れてくる・・・。
いやいや、晴れてきてくれなければ困る。
いつも祈るような気持ちでそう思う。そして子連れで行き始めてここ二年、その祈り通りに晴れてくれた。子供たちは晴れ女なのだ。
そうはいっても今年もまた晴れるという保証はない。
しかも時期は4月末。まだ雨期を引きずっているかもしれない。少なくとも統計上はまだまだ降水量が多いはずなのだ。
真夜中、寝ぼけてぐずるレナに業を煮やし、パパはママに座席の変更を願い出た。
仕方ない。パパは運転手だ。
諦めて最後尾のレナの隣の席に移動すれば、本当にこの席ってリクライニングはできないし最低。
何度も揺れてシートベルト着用サインが出たこともあり、ほとんど眠れなかった。
パパが後ろを振り向いてあと1時間ぐらいで着陸だと教えてくれた。
何だか寝不足で頭の中が働かない。
次に何時、食べ物を口にできるか判らないので夕食時にカナが残したパンを食べておこう。動物の顔をした可愛らしいパンは、かじってみたらクリームパンだった。
機内の灯りが点灯し、まもなく着陸態勢に入ると放送が入った。
夜中に何度も起きたレナは今になって熟睡している。
シートベルト着用サインの前に全ての荷物を降ろして座席の下などに移す。
雨のケアンズ空港に私たちの乗ったカンタス機は着陸し、シートベルトのサインが消えると同時に示し合わせたとおり私たちはさっと立ち上がった。
しかし数人抜いたところで既に列はストップ。
何しろ最後尾に座っていたのだ。降りる順番だってビリに違いない。
実際の所乗る順番などどうでも良いのだ。降りるときに迅速に行動しないと、ケアンズの入国審査で長らく待たされることになる。
スチュワードたちが「バイバイ」と手を振ってくれて、ようやく飛行機の外に出た。
後はできるだけ早足で歩く。パパがレナを抱きかかえ、ママがカナの手を引く。一人抜き、二人抜き、何とか入国審査に辿り着いた。
そうそう、私たちはいつも時間のロス無く入国したいので、食料品は何も持ち込まない。
全部現地で買えばいいやとお気楽なもの。
オーストラリアの食品持ち込みは非常に厳しくて有名だが(参照
オーストラリアへの薬の持ち込みとイオン飲料)、ここ何年かは取り締まりも弛んでいるのか一度もスーツケースを開けられたことはない。
だからそんなものかなと思っていたのだが、今回、見てしまった。
隅に連れて行かれ思いっきり全部開けられている人を。
それも出てくるわ出てくるわ。
カップラーメン、レトルト食品、いわゆるレンジでチンのサトウのご飯・・・。
軽いけど嵩張りそうなパッケージが次から次へと。
あっというまに検査テーブルは小山のようになってしまった。
スーツケースいっぱい、全部食品で埋め尽くされてるんじゃないの?
あれは流石に自業自得だよ。
荷物が出てくるのもすぐだった。
レナも目を覚まし、オーストラリアに着いたんだと姉に知らされる。
パパはとにかく一服しに外へ。
後を追い、自動ドアの外に出て、ああ、この湿った空気。
ケアンズだぁと思った。
まだ暗いのに木々の上からは賑やかな鳥の声が聞こえる。ケアンズはいつもそうだ。小鳥たちの天国だ。
一息ついた後でパパはまた建物の中に戻って、今度はレンタカーの手続きをするためハーツのカウンターに向かった。
到着ロビーでは、ツアーの現地係員たちがめいめいツアー名を書いたプラカードを持って立っている。今年は個人旅行だから自分のツアーガイドを捜さなくて良い。
レンタカーのカウンターはがらがらだった。
というか、他にだれも客は居なかった。
ケアンズ市内に泊まれば、オプショナルツアーもみんな送迎付きだし、ショッピングゾーンも徒歩圏内にあるからレンタカーなど必要ないのだろう。もっとディープな達人になると、空港税を嫌って外で借りるかもしれない。
ハーツの受付係は、ぺらりと一枚紙の簡単な地図と、やはりぺらりとした簡単な観光施設クーポンをくれた。
行き先はミッションビーチだって言ってるのに、くれた地図はイニスフェイルぐらいまでで切れてるし・・・。