1.ケアンズ空港着
二日目 7月15日(木)
まだ暗い
ケアンズ空港にタッチダウン。
カナは目覚めたが、レナは寝たまま。
去年の教訓から、空港を出るまでは急いだ方が吉と知っている。入国審査、検疫と、早朝の空港は長い行列になるのだ。
座席が奥の方だったので努めて準備を早くする。パパが荷物とカナを引き受け、ママはリュックを背負ってレナを抱きかかえる。走りはしないけれど、早足で、ひとり、またひとりと抜いて、入国審査に付く頃はかなり前の方に来ていた。
幸いまだ列はできていなかった。すぐに審査を受けられる。
振り返るとすぐ後ろからはもう行列になっている。飛行機に乗っているのは大した人数ではないのだが、審査をかなり丁寧にやっているので、どうしたって列が出来ると進みはのろい。
スーツケースもそんなに待たずに出てきた。
検疫はもっと早かった。
オーストラリアは持ち込みに厳しいことで知られる。他の大陸や島から動植物を持ち込まれると固有の生態系に多大な影響を及ぼす。食品だけでなく、麦わら帽子や土の付いた靴などもチェックを受ける。常備薬は仕方ないが、キャンディーや飲み物などのどうでもよい食品類は、いっさい持ち込まないのが賢明だ。
去年は一応、口頭でも食品類を持っていないか確認されたが、今年はまったくノーチェックだった。薬だけはすぐ出せるようジップロックに入れて別にしていたが、それすらも確認しなかった。それでも中にはスーツケースを全部開けられている人もいたので、態度やタイミングに寄るのだろう。何もかもあっという間に終わり、空港のロビーに出ると各々のツアー名を記した紙を掲げた現地担当者たちが、ずらりと並んで待っていた。
私たちを待っていたのはいかにもオージーといった体格の良い明るい男性だった。
去年、A社のツアーで行った私たちは、同じ旅行者の他のツアー客と一緒にまとめてケアンズ市内のホテルに運ばれて、長々とオプショナルツアーやショッピングなどの説明を受けさせられた。
だからツアーという物はすべからくそういうものだと思っていたのだが、今年お願いしたツアー会社B社の担当オージーLさんは開口一番「タバコが吸いたいですか?」
「もちろん」と、ヘビースモーカーのパパ。
「よくがんばりましたね。外に出ましょう」と明るく誘い出し、ここで時間をつぶしながら他のツアーを待つのかと思えば、
「今日の
ポートダグラス行きはあなたたちだけね。私は40人を相手にするのも一組を相手にするのも給料は同じ、今日はあなたたちだけで助かります」と、いきなり送迎車に案内してくれた。