子連れ家族のための温泉ポイント
- 湯温★★★★☆ 泉質★★★★★ ぬるめ浴槽有り
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★☆☆ 脱衣所にベビーベッド代わりになる台あり
子連れ家族のための温泉ポイント
2015年にリニューアルオープンしたばかりだと言う御谷湯は思っていたより目立たない外観だった。
年配の人の利用が多いバスを降りて、石原三丁目交差点からほんの1~2分。
自転車が何台も停められていたのでそこがそうだとわかった。前まで来て、ようやく公式サイトで見た洒落た入り口だとわかる。横から見ても単なるビルだが、正面から見れば白の温泉マークを染め抜いた紺の暖簾が下がっているのが見えた。
この温泉銭湯は浴室が4階と5階にあり、週ごとに男女を入れ替えている。
面白いのはフロアで男女が別れるので、4階行きと5階行きのエレベーター前に男女別の暖簾が下がっていることだ。
この週は女湯が5階だったので右のエレベーターに乗った。
4階と5階にはそれぞれ違った趣向が凝らしてある。
4階は体温ちょうどの不感湯温泉があり、テーマは洞窟。この不感湯温泉は一度入ると抜けられなくなるほどはまる人が多いらしい。
5階は逆に開放感を意識して、雄大な逆さ富士山のペンキ絵が売り。
両方ともに半露天風呂からスカイツリーは見えるが、5階の方が高い位置にある分よく見える。
館内全体に木のにおいが漂っているが、特にそれを強く感じたのが脱衣所だ。
古めかしい銭湯や共同浴場に残っていそうな大きく漢数字を書かれた木のロッカーが、削りたての白木のようにぴかぴかで不思議な感じ。古いのに新しく、新しいのに古い。
脱衣所自体も余裕のある造りで、天井も高く、下がっているライトが純和風じゃないところが洒落ている。
脱衣所のトイレにも驚いた。バリアフリーを意識しているのはわかるがそれにしてもものすごく広い。御谷湯が福祉にとても力を入れているというのはこういうところにも表れている。
さて、オープンの3時半に着くつもりだったが、予想外にバスに時間が掛かり4時近い訪問になってしまった。既に脱衣所も浴室も混んでいる。もう入浴を終えて涼んでいる人もいるくらいだ。
洗い場も混んでいたが何とか一席確保。銭湯らしくシャワーは固定式だがシャワー用のハンドルが壁に付いていて湯量のコントロールがしやすい。
ざっと洗ってから浴槽に向かった。
黒湯の浴槽は三つあった。右から20度弱の冷たいお湯、42~43度の熱めのお湯、40度前後のぬるめのお湯。ぬるめのお湯の浴槽が一番大きく、4人ほど入っている。他の二つは誰もいない。
三つともに手を入れて、まずぬるめに入った。
お湯の色はいかにも東京の黒湯。薄めのコーヒーみたいに真っ黒で、でも透明感はあるのでうっすらと膝の辺りまでは透ける。白い結晶のような粉のような湯の花が少し浮いている。
さっき洗ったボディーソープのせいでにおいと肌触りはよく判らない。そのうち判るだろうとしばらく入り、それから熱湯に移動し、それほど熱くはないなと思いつつも今度は冷たい方に入った。
あっ、無理。やっぱり冷たすぎる。本来の源泉温度から言うと、この冷たいお湯が一番自然のままに近いはずだが、やっぱり冷たいのが苦手な私は膝までも入れられない。しぶしぶぬるめに戻った。
あれこれ入っているとボディーソープのにおいが抜けてきた。向かいの奥にある薬湯の方からよもぎっぽいにおいが漂ってきて邪魔をするが、それでも発酵したような甘いにおいは感じ取れる。肌触りもだんだんとするするとしてきて、曲げた腕や足のこすれるところにゆるゆるとオイリーな成分が滑り込むような面白い感触。
ミストサウナみたいになっている薬湯と、こちらは無色透明な圧注浴などを一通り見た後、半露天風呂に出てみた。
この半露天風呂、スカイツリーが見えるというのがポイント。どんな風に見えるのかと思っていたけど、なかなかどうして笑えたというか、なるほどと唸るというか。
浴槽に入るまではどこにどうやって見えるのか不思議でならなかった。見える窓らしい部分はスリットになっていたし。
それがね、お風呂に入って見上げると、ピンポイントでスカイツリーが見えるの。スリットの部分から、まるでマグリットのだまし絵みたいにスカイツリーが見えるの。
考えてみればビルの5階だものね。浴槽に腰を下ろして斜め上しか見えない窓を見上げたら、周辺の建物は何も見えず、虚空にスカイツリーだけが見えるわな。
半露天風呂のその露天部分もスカイツリー側の窓じゃなくて、浴槽の隣のベンチのスペースの天井が一部空いていて、これもよく考えて作っているなと思った。
荒天時でもお風呂に入れるし、外気が入るからのぼせにくい。
でもお湯は半露天風呂より中の方がいいね。
最後はまた中のお風呂に戻った。もう一度冷たいお湯にトライしてみたけどやっぱり膝上でリタイヤ。ぬるめのお湯でしばらく浸かる。肌はこう、エナメル風につやつやしてきた気がする。
この時ようやくペンキ絵をゆっくり見上げる余裕ができた。