子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★☆☆☆ 温度は少し熱め、泉質は塩分が強く濃いので長湯注意
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★☆☆ 脱衣所にクーファン有り、雰囲気は浴室は素っ気ないが建物は満点
子連れ家族のための温泉ポイント
歌人として、また万葉集の編纂者として知られる大伴家持に関わるこんな伝説がある。
蝦夷征伐に失敗した大伴家持がこの地方に隠棲したときに、土地の女性との間に一女をもうけた。
その娘は京子と名付けられ、流行病で母を亡くした後に意地悪な継母に育てられることとなった。
京子は継母の辛い仕打ちに耐えきれず、母の形見の鏡を胸に抱き森の池で泣いていたところ、水面に映った自分の姿を懐かしい母と見まがい、哀れにも池に身を投げてしまったという。
この池は鏡が池と呼ばれ、今は公園になっている。
松之山温泉の源泉の一つ、鏡の湯の名は、この鏡が池に由来する。
鏡の湯を引く宿は、凌雲閣と旅館明星と二軒ある。
今回入浴させていただいたのは、日本秘湯を守る会会員宿のひとつ、凌雲閣の方だ。
大晦日の昼下がり、小雪がちらつく中を訪問した。
凌雲閣は昨日立ち寄った松之山の日帰り温泉ナステビュウ湯の山より更に県道を南下したところにある。
途中、鷹ノ湯方面への分岐が見えてすぐぐらいだ。
行きすぎてしまい、少し戻った。小高い斜面にあり、最後は雪道を登らなくてはならない。
やはり温泉旅館は木造建築に限る・・・そう強く思わせるほど、迫力の外観だ。
重そうな雪がどっしりと乗り、細いつららが幾本も垂れ下がった屋根、大きな鏡餅とお正月飾りで出迎える重厚な玄関。
浴室は長々と廊下を渡った新館にある。増改築を繰り返したのか、くねくねと曲がっている。
その廊下を歩いているうちに、もう臭ってくる強いアブラ臭。これこそが松之山だ。
脱衣棚にも小さな鏡餅と「賀正」の半紙。
浴室は外との気温差もあって湯気もうもう。
お風呂はとりたてて何の変哲もないタイル張り。湯気のせいもあり窓の外も見えない。
浴槽内で一部循環しているが、湯口からは源泉が出ている。
味見をすれば思わず眉をしかめたくなる。
昨日のナステビュウは、しょっぱくて苦くて渋かった。しかもその味がえらく濃かった。ここまではまだ飲めないことはない。
しかし今日の凌雲閣は更に発酵してる。チーズかクサヤでも入っているようだ。
塩漬け乳酸菌といった個性的な味だ。
温まり方は相当なもの。
ずしっ、どしっと来るので長湯は禁物。
灯油臭プラス薬品臭。
綺麗な緑色のお湯かと思ったが、浴槽のタイルも緑のようなので、どこまでお湯の色かよく判らなかった。
湯の花は茶色いものが少し。
湯上がりはベタベタ肌。
服を着ながら流石にここはベビーベッドの備え付けは無いかと思ったら、とんでもない。脱衣棚の上になんとクーファンが置いてあった。これなら首のすわらない赤ちゃんでも一緒に入れるかもしれない。
さらにこのクーファン、男湯の脱衣所にも置いてあった。素晴らしい。これなら首のすわらない赤ちゃんでも、「パパと一緒にだって」入れるかもしれない。
雪に埋もれた木造三階建ての老舗旅館は、日帰りなどではなく泊まってこそ本当の価値が判るのだろう。
帳場では美人女将がにこやかに、「12,600円のお部屋からございますよ」と誘惑した。