子連れ家族のための温泉ポイント
- 湯温★★★★☆ 泉質★★★★☆
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★★★ 赤ちゃん不可ではないが子連れの雰囲気ではない
子連れ家族のための温泉ポイント
以前から行きたかったところの一つ。一回行こうとして、電話をして、今からならいいですよと言われたにも関わらず、では路線バスで向かいますと言ったら、電話口で「今、バスは動いていません」と。
ちょうど災害か何かで止まっていたんだよね。アンラッキー。
仕事では箱根に行く機会は多かったが、そのほとんどが小田急系だったので姥子に寄りづらかったのもある。姥子は小田急系の箱根ロープウェイが通っていることもあり、小田急系の箱根登山バスが走っていないのだ(ロープウェイに乗れってこと)。西武系の伊豆箱根バスには馴染みがなく、その時行きそびれてから、またずいぶんと時間がたってしまった。
実は「姥子温泉秀明館」は源泉を2本持っている。1本は動力で汲み上げている元箱根20号源泉で、もう1本は貴重な岩盤から染み出す元箱根4号泉。
ようやく念願かなって「秀明館」を訪問できたのは2024年1月。珍しく箱根でまとまった自由時間が取れたのに合わたもので、岩盤湧出泉のタイミングに合わせるどころではなかった。
そしてその後同年の6月に、今度は岩盤湧出泉に合わせて再訪することができた。長かった。
泉質は同じで20号泉もすぐ近くで湧いているのだが、足元湧出ならぬ目の前の壁湧出の元箱根4号の方が希少価値は非常に高い。さらに神秘的だ。なにしろ常時湧いているわけではない。年に3度ほど雨の多い時期にのみ湧出する。いつ湧くかはその時にならないとわからない。いつまで湧いているかもその時にならないとわからない。
なお、4号泉が湧くと公式サイトからお知らせが出る。岩盤湧出泉の4号泉に入りたい人は、このお知らせをチェックしておくと良いわけだ。
最初の訪問も本来なら4号泉のお知らせを待ってから行けば良かったのかもしれないが、先にまず20号泉に入り、後日4号泉が湧いてから再度入るという自分のタイミングは、今ではこれがベストだったと思える。両方知ると良いし、4号泉が後なら、これがこうなるんだ!と改めて驚きと感動を受けることができるから。
なお、館内は全て撮影禁止。貸切休憩室の湯床内すら撮れない。なんというかポリシーのはっきりしている温泉なのだ。天山・一休っぽいなと思ったら同経営だった。観光スポットとしての紹介など一切いらぬという姿勢なのだ。もし取材するとしても、違う角度から行かねばならぬ。
アクセスは公共交通機関なら、西武系の伊豆箱根バス「姥子」バス停から徒歩1分程度。小田急系の箱根ロープウェイ「姥子駅」からは徒歩5分程度。
敷地内に入ると予想以上に広い。昔は旅館で今は日帰りのみだというが、もう使っていないであろう建物も、外から見る限りきちんと残されている。
玄関の辺りを外から撮影していると、受付の男性が出てきて、今湯床の支度をするから先に神社のお参りをどうぞと。神社があるんだ、へー、と思ったが、行ってみたら薬師堂だった。神社と聞いたのは聞き違いだったか。
浴室は男女分かれていて、女湯に続く廊下をギシギシと歩くと休憩室があり、その先はドアがなくそのままロッカー、棚、浴槽とひとつながり。
浴室は荘厳な洞窟のようで、建物の中なのに正面はむき出しの岩盤。そしてその岩盤に垂れ下がるようにしめ縄が張られている。聖域なのだ。
岩盤の前に四角い浴槽が二つ。左側にパイプが通っていて、そこから20号泉が注がれている。ちなみに4号泉が湧出しているときは20号泉は止めるのだそうだ。だから浴槽には常に4号泉か20号泉のどちらかが入っていることになる(湧出し始めと終わりは混在するかも)。
1月の時点では20号泉だったので、岩盤からは特に何も染み出していない。パイプから出てくるお湯が全てだ。肌触りはずっとギシギシしっとり。においはあまりないが、少し焦げっぽい。味もほとんどしないが、ほんの少し酸っぱいといえば酸っぱいかも。口の中も滑りが悪くなるようなテクスチャ―。
6月に再訪したときには4号泉がたっぷり出ていた。この年は例年より早い6月1日から湧きだして、6月24日でもまだ出ているか心配しながら行ってみたが、それは杞憂に終わり、十分大量に湧出していた。
だいたい1年に3回ぐらい湧出し、一度出ると1ヵ月ぐらい続くことが多いが、最近は異常気象で大雨が降ると、例年の3回とは別の時期に湧出し始めることもあるのだそう。
浴槽の正面の岩盤と、そのほかに湯口になっている部分があるそうだが、止まるときはまず正面の岩盤から湧出量が減っていき、最後に湯口も止まって終わるのだという。
1月に来た時には何も出ていなかった岩盤のあちこちからお湯が染み出し、小さな滝を作っている。左に大きな湯口があり、そこから大量のお湯が湧きだしている。この湯口も、目の前の岩盤の続き(浴室棟の外)から湧出しているものを集めたお湯を出しているのだそうだ。
そして岩盤と浴槽の間にへこみがあって、1月には単なる空きスペースだったそこにお湯があふれ、それが湯船に大量に流れ込む。さらに湯船からもあふれ、脱衣棚から下りる階段の一番下まで沈んでいる。
2つの湯船のうち、左側にはパイプからぬるい湯が足され、きもち程度ぬるくなっている(実際はそんなに温度は変わらないが)。このパイプのぬるい湯は岩盤から染み出したお湯を熱交換で冷ました源泉なので、入れても薄まることはない。
温度を測ってみると、右の浴槽が44.5度、ぬるい湯を足している左の浴槽が44度、岩盤との間のへこみのお湯が48.4度だった。けっこう熱い。床まであふれてくるお湯はさすがにぬるくなるが、それでも時々熱いままのお湯が混ざって流れてくる。
お湯の印象そのものは20号泉とそれほど大きな違いはないが、岩盤湧出泉は圧倒される。これは一度体験すべき神秘の温泉だ。