子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度☆☆☆☆☆ 泉質★★★★★ 湯温はとても熱い、泉質は刺激なし
- 設備☆☆☆☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ 観光客が子供を連れて来るにはあまり向いていないかもしれない
子連れ家族のための温泉ポイント
「この辺かなぁ」
私たちは迷っていた。
雪の夜道は何処も同じように見えてとにかく判りにくい。石畳の道は一本だし、距離にしたって泊まっているみやま荘からほんの十数メートルのことだと思うのに。
共同浴場松の湯に行こうとしていた私たちは、湯宿温泉街を歩いて石畳沿いの竹の湯まで来てしまった。
違う。行きすぎだ。引き返さなくては。
ようやく私たちは松の湯に至る道を見いだした。
本当に道だか他人の家の敷地内だか判らないような道だった。これは知らなかったらとても辿り着けない。
小径の右手に松の湯は建っていた。
外観を撮影しようにも、全体が入らないくらいに道が狭い。
ちょうどお風呂上がりの地元の方が一人出てきた。
松の湯は竹の湯と異なり扉そのものに鍵穴はなかった。
かんぬき式になっているようだ。そして今は地元の方が入っているせいか、かんぬきは掛かっていなかった。
ここは扉を開けるといきなり浴室だ。
狭い脱衣所がそのまま浴槽のあるスペースに繋がっている。
そのせいか全体にむわむわと湯気が籠もり湿度が高い。
野沢、草津など共同浴場にはときおり見られる作りで、防犯効果も高いと思われる。難点と言えば、服が湿ったり床がびしょびしょになりやすいことだろうか。
松の湯の浴室は共同浴場らしい質素な造りで、床と風呂の底はタイル張り、浴槽の縁はコンクリを固めて長方形にしてある。
横に小さな源泉槽のようなものが付いていて、もっとお風呂に近づくと、お風呂そのものは下で男湯と繋がっていることが判った。
一応格子がはまっているが、手や足を突き出せば反対側から触れそうだ。
お湯はとても熱いことを覚悟していたが、意外にも適温だった。
どうも先に入っていた地元の方が加水していたようだ。
同浴した地元の方は、湯宿に来たのは初めてなのかとか、どこのお風呂に入ったのかなどいろいろ聞いてくる。
何か甘い石の臭いがする。
どこで嗅いだんだか、石の臭いが甘いというのも変だけどとにかくそんな感じの懐かしいような臭い。
とろみがあって無色透明ながら、ところどころ茶褐色の湯の花が少し舞っている。
肌触りは軽いきしきし感。
湯宿温泉は源泉一本と言うが、この後入った竹の湯や翌朝入った窪湯・小滝の湯と比べて、明らかにこの松の湯だけお湯の印象が異なる。
もし湯宿温泉で共同浴場に入る機会があったら、窪湯・小滝の湯・竹の湯はどれか一ヶ所を選んでも良いが、可能なら松の湯には入っておくことをお勧めする。
私たちが入っている間に一人二人上がっていって、また一人二人新たに地元の方が入りに来た。
ここは一種のサロンになっていて、何となくこの時間帯は客足が途絶えることはないようだった。
松の湯から上がった後、私は友人たちと別れ、一人で今度は竹の湯に行ってみることにした。
細い脇道沿いにある松の湯と違って、さっきのぞいた竹の湯は、まさに石畳の道沿いの目立つところにあるので、方向音痴の私でも迷うことはない。
竹の湯はシンと静まり返っていた。
松の湯の賑わいとは対照的だ。
男湯と女湯の戸の間に、可愛らしい赤いポストがある。
このミニチュアのポストは郵便物を入れるためのものではない。詠んだ俳句を入れるためのもののようだ。
中は松の湯と異なり、ちゃんと脱衣所と浴室が別れている。
誰もいないので真っ暗で、電気のスイッチを探してしばし逡巡した。
お湯はこちらはすっきりと熱く、熱い分、とろみとか肌触りを楽しむ余裕は無い。そのかわり何故か甘い臭いはこちらの方が強く感じる。
浴槽はほぼ正方形。床は松の湯同様タイル張りだが、浴槽と壁は石でできている。全体的に松の湯より新しく綺麗な感じだ。
湯の花は見つからない。完全な無色透明。
男湯の方は誰か入浴しているらしく、ざざーっとお湯を流す音が聞こえるが、女湯は独占貸切状態。
帰りがけにもう一度松の湯に寄って、もし誰もいなかったら浴室の写真だけ撮らせてもらおうと思った。
でも、やっぱり松の湯は大盛況で、ドアを開けるまでもなく外まで賑やかな話し声が聞こえてくる。
まもなく9時・・・湯宿温泉の共同浴場は地元の人たちだけの時間になる。