子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★★★☆ お湯は熱め、泉質も特に問題なし
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ 畳の休憩室あり
子連れ家族のための温泉ポイント
群馬の高崎と新潟の寺泊から海上を経て佐渡までを結ぶ三国街道には35の宿場町があり、これらはみな江戸時代の参勤交代などで栄えたが、そのうちひとつに現在の高山村のほぼ中央に位置する中山宿があった。
中山宿は、国の登録文化財に指定された建築物を残す新田本陣と、既に焼失した本宿本陣から成り、越後からはるばる来た旅人はこのあと難所の中山峠(今井峠)を越えて沼田の方へと向かって行った。
当時の三国街道は鉄道の普及によって廃れたのち、国道17号線となり今また多くの人や物資を運んでいる。しかし、既に高山村には宿場町として栄えた当時の面影は残されていない。
さて、高山温泉いぶきの湯は、高山村の村営温泉として中山宿跡地にもほど近い地に1992年の4月にオープンした。ふるさと創生1億円事業の一環だ。
4年後にプールも備えたふれあいプラザが完成し、子連れ客や一般観光客はこちらに流れたが、いぶきの湯は今も地元の方たちの憩いの場として賑わっている。
いぶきの湯の外観は小ぢんまりとして一見瓦屋根の民家かと思う作りだった。
入るとすぐ左手に受付があって、ちょうど私とほぼ同時に入ってきた女性が入浴料を払っているところだった。後から旦那も来るからその分も一緒に払っちゃうわという話をしている。地元の方のようだ。
ロッカーなんかない本当に棚だけのげた箱に靴を置いて入口正面の廊下を行くと、受付の奥にそれほど広くはない休憩広間があってアラジンストーブというのだろうか、昭和の中頃に活躍していたような円筒形のストーブが燃えている畳の間で何人かの客がのんびりとテレビを見ていた。
浴室は右だ。大きく「ゆ」と書かれた男女別の暖簾が下がっている。
脱衣所も広くはなく、人相の悪い指名手配者のポスターが貼られていた。
脱衣所にいると、さっき受付をしてくれた方が慌てて入ってきた。
「ごめんなさい、渡すの忘れちゃったわ。お年賀よ」
さっきほぼ同時に入ってきた女性と私とに袋入りのタオルを持たせた。
入浴料も300円と申し訳ないくらい安いのに、タオルまで頂いちゃってどうしてよいやら。
以前、同じ群馬のきたたちばな温泉でも同じようなことがあった。
お正月に新潟の日帰り温泉に行くと樽酒のサービスがあるが、群馬の日帰り温泉では年賀タオルが頂けることがある。お国柄の違いかな。
微妙な時間帯だったが、お風呂は結構混んでいた。
みな地元の方ばかりのようだ。
窓際に縁がゴマ塩模様の御影石でできた長方形の石の浴槽があり、無色透明のお湯が満たされている。
お湯はかなり熱かった。
きりりと熱くて肌ざわりきしきし。すっきりとしているのにとろみを感じる。
湯面からほんのりと淡い石膏の臭いが立ち上って、四万から帰って来たばかりなのに、ちょっと四万に似たお湯だなと思った。
湯あがりはぽかぽか。
熱いくらいだった。
ところでこの高山温泉いぶきの湯、入浴券に制限時間のスタンプを押してくれるのだが、渡された時、「すいません、日付が違っているけどちゃんと使えますので気にしないでください」と受付が言っていた。
よく見ると、20年12月33日という有り得ない日付。
年賀タオルを頂いたことで判るように今日はもう21年も開けた正月2日。
いかにものんびりとしたいぶきの湯に似つかわしい思い出だ。