クアハウス御宿に行くつもりではあったが、私たちは途中でふらふらと「
元湯 美人の湯」の幟に誘われて左に曲がってしまった。
後でパパに「美人の湯」って書いてあったから曲がったんだろうと言われたが、実際はyuko_nekoさんが「元湯だって」、と言ったからというのが正しい。温泉好きは「元湯」とか「湯元」という言葉に弱いのだ。
細い上り坂の上に駐車場がある。
どうもここは旅館のようだ。あれだけ派手に幟を立てているので日帰り入浴を受け付けていると思うが、正直、事前に調べた情報にここはまったく出てこなかったのでノーマークだった。
「ここでいい?」
「う、うん、当たりかハズレか判らないけど入ってみようよ」
二人ともこの時点では自信なさげである。
とりあえず入れるかは入れないかだけでも聞いてみることにした。
私が一人で受付に行ってみる。
何となくここは旅館と言っても外観には民家然としたところもある。入り口のドアは両側に開くようになっている自動ドアだったが、その両方に「元湯」「元湯」と書いてあるだけで、旅館の正式名称も何だかよく判らない。後で知ったが「元湯」というのはキャッチコピーではなく、これが旅館の正式名称だった。
ロビーに受付の男性が立っている。何となく責任者っぽい雰囲気の人だ。
さらに日帰り入浴時間は11時半から4時までと書いてあるのが見えた。
しまった、間に合わなかったかも。
ええい、駄目元で聞いてみよう。
「今からでも日帰り入浴は受け付けていただけますか?」
男性はちらっと時計を見た。
既に3時50分。
「大丈夫です。まだあと10分ありますので入れますよ」
やった。