子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★☆ 湯温はぬるめ、泉質も特に問題なし
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ お湯の透明度が低いため、お風呂の深さが判りにくいので注意
子連れ家族のための温泉ポイント
子供の頃聞いた童謡の中でも、異国情緒溢れる歌詞とメロディーで印象に残っているのが「月の沙漠」だ。
ラクダに乗った異国の王子さまとお姫さまが、ただ無言で月夜の砂漠を越えていくというそれだけなのだけれど、どこか不思議な余韻を残す歌だと思った。
外国の民謡でも翻訳した歌なのだろうと根拠もなく思っていたが、実はこの歌の舞台は日本の、それも千葉県房総半島の御宿海岸なのだと知ったのはつい最近のことだった。
作詞者は故加藤まさを。抒情画家にして作詞家。
晩年は自らが月の沙漠を詠んだ御宿で過ごし、今もこの地に眠る。
御宿にはクアライフ御宿という温泉施設があるので、はじめはそこに行こうと車を走らせた私たちだが、ついふらふらと手前で「元湯 美人の湯」と書かれた幟に誘われて左に曲がってしまった。
細い上り坂の上に駐車場がある。
何となくここは旅館と言っても外観には民家然としたところがある。入り口のドアは両側に開くようになっている自動ドアだったが、その両方に「元湯」「元湯」と書いてあるだけで、旅館の正式名称も何だかよく判らない。後で知ったが「元湯」というのはキャッチコピーではなく、これが旅館の正式名称だった。
脱衣所は狭い。
お風呂もそんなに広くない。長方形の浴槽にコーヒーのように真っ黒なお湯だ。
中央にぼこぼことジャグジーの泡が出ている。
そしてこのお湯は、とてもすべすべする。
にゅるにゅるというのとはまったく違う。お湯の中で肌をこすってみると判る。お湯自体がすべすべとしている。
にゅるにゅるも好きだがすべすべも好きだ。
臭いは枯れ草の臭い。
モール臭・・・なのか。泥付き野菜を洗っているときのような枯れ草と土の臭いがはっきりとする。
「養老渓谷あたりのお湯が黒いのは知っていたけれど、ここも黒いんだ」という私に、先に湯船でくつろいで入らした女性が、「この辺りのお湯はみんな黒いわよ」と教えてくれた。「ここのお湯はいいわよ。近くにクアライフ御宿もあるけどあちらは千円でしょ。ここは500円(当時)で入れるし」
お風呂は露天風呂ではなかったが、窓際にあり、ちよっと離れたところに外房の海が見えた。
波が荒い。
そのとき気づいたが、浴槽の中、壁の部分から直接源泉が注入されている。
湯口から出ているのは加熱して恐らくは循環している湯だが、こちらは20度足らずの水のようにぬるい源泉そのものだ。
先ほどの女性が、ここのお湯はぬるめだけどとても温まるので、上がった後は汗が止まらないわよ、などと言っていたが、確かに湯上がりの体はぽかぽかに温まっていた。さらにぴりぴりちりちりと肌の突っ張る感じも強い。結構濃い感じだ。
実は御宿海岸では毎年9~10月に伊勢えび祭りを行い、伊勢えび試食などのイベントを開催している。
その一環として、この御宿天然温泉元湯の日帰り温泉がテレビのもしもツアーズで紹介され、2006年9~10月の土日、すなわち伊勢えび祭り開催期間に限り、入浴無料という太っ腹な企画が立てられた。
私たちはたまたまそれを知らずにやってきて、ちょうどタイミング良く無料で入浴させて頂けた。
こちらの温泉は昭和45年に千葉県内としては最初の大深度掘削により開発されたものだが、施設の方はここ数年休館していて、今年の7月にリニューアルオープンしたばかり。
今ちょっと狙い目の温泉かもしれない。
宿泊すればお一人様一匹、夕食に伊勢エビがつくそうだ。
日帰り利用でも500円で入浴とコーヒー付き(当時)と、千葉の温泉としては破格の待遇。
月の沙漠で知られる風光明媚な御宿海岸。
しかし今はむしろサーフィンのメッカとしての方が知られているかもしれない。
帰り道、夕日が綺麗だった。
今日は台風一過になると思った割には、昼間は雲が多かったが、今この時間は水平線近くに延びた僅かな雲があるだけだった。
空は透き通り、海辺では恋人同士が語らっていた。
波間には昼間と変わらず海坊主みたいなサーファーたちが、気持ち悪くなるくらい大量に漂っていたが。