本当にやっているのかなと思いながらさつき荘の赤ちょうちんのドアを開けると、中は確かに居酒屋と言えばそうなんだけど、カウンター一つの狭い店内は座る所は詰めて6席ぐらい。その時は知らなかったがカウンターの中で準備をしている男性はさつき荘のご主人の弟さんだった。夫は大将と呼んでいる。
カウンター回りは整頓した居酒屋だが、部屋全体の雰囲気はさつき荘のロビー同様どことなく雑然とした印象。
まだ他に客は来ておらず、夫が一人で飲んでいた。
私はお腹もいっぱいだったし、隣に座って夕食時に日本酒を飲んだのでソフトドリンクを頼んだ。
夫が来てすぐに予約の電話が入ったとの事で、その後三人のお客さんが来て、私たちの隣に座った。
観光をPRする仕事の人と、観光その他の情報を売る媒体産業の人という感じだった。
大将と話をしていると、たまたま明日、下風呂港で龍神祭というお祭りがあると知った。
漁船は海の安全と大漁を祈願して大漁旗を掲げ次々と港を出ていく。たぶん舟にも乗せてもらえるよと。
全然知らなかったと言うと、観光客向けにPRしていないからという話になって、隣に座っていた観光関係の仕事と思われるお客さんが、こういうのも下風呂の売りにして観光客を呼んだらいいのになとつぶやく。
大将曰く、昔は漁港の規模ももっとずっと大きく、200艘ほどの舟が一斉に大漁旗を棚引かせながら祭りを行ったと。今は10艘ぐらい? ずっと減ってしまったと言う。
・・・そうなんだ。
その他にも夫が明日は大間でマグロを食べたいと言うと、大間のマグロはブランド化していて相場より高いよと教えてくれる。夕食時に仲居さんも同じようなことを言っていたな。
今の時期のマグロは脂が乗っていない。でも脂さえ乗ってりゃどんなマグロだって美味しい。夏場の脂の乗っていないマグロはそのさっぱりした味が旨いんだとかいう話も出る。
ああ、思い当ることがある。三年前だっけ、函館の市場で買った大間のマグロの赤身。あれがそうだった。
下風呂がいたく気に入った夫は、次に来るならどの季節がお勧めか聞くと、やっぱり冬の鮟鱇が旨いという返事。
今年の冬は娘の大学受験があって無理だけど、いつか冬に来よう。冬の下北半島ってものすごーく寒そうだけど。
北海道からフェリーで渡ってくるっていうのもいいよなと夫は言う。
今度は津軽半島にも行って、それから青森県を南下して、岩手とか秋田とかあの辺も行きたい。
まだ今回の旅の初日なのに、もう次に青森に来る時のことを考えている。
また下風呂に泊りたい。できればさつき荘。
でもってまた夜にはきっとこの居酒屋に来るんだ。