そういえば下風呂温泉には遊めぐり手形と言ういわゆる湯巡り温泉手形がある。
この辺は旅行前、私より夫の方がちゃんと調べていて、下風呂温泉の旅館宿泊者に限り800円で3ヵ所のお風呂を回ることができるとのこと。
私は何も考えず、確か下風呂には共同浴場が二つぐらいあったからそこと、あと適当にもう一ヶ所ぐらい入ればいいかと思ったが、夫は料理を運んできてくれた仲居さんにアドバイスを求めた。
彼女曰く、この湯巡り手形は下風呂温泉の旅館経営者たちが温泉街に賑わいを呼ぶにはどうしたらよいか知恵を絞って始めたもので、個別の旅館としてはこの手形で入浴してもらってもメリットは少ないのだという。
実際宿泊者限定と言うことは、チェックイン後に使用するだろうから、昼間の日帰り客入浴時間と異なり、宿泊者の入浴時間とバッティングすることもあるだろうと予測する。
よって、旅館によってはお断りされることもあると言う。その宿の宿泊者が優先だからだ。
実際このさつき荘でも、宿泊は3組しか受け付けていないそうだが(この日は満室)、満室の日は夕方も朝も手形入浴客は断っているのだそうだ。なんせお風呂は貸切利用の一ヶ所しかないから。
で、その手形をどこの施設で使うのが良いかについては、
「(共同浴場の)大湯と新湯で一ヶ所ずつ、それからニュー下風呂さんに入れば四種類、全部違う源泉のお風呂に入れますよ」との助言。
「ニュー下風呂さんは大丈夫でしょうか?」
「・・・うーん、今日も混んでいるようだから難しいかも。ちょっと聞いてみましょうか?」
ありがたい!!
そして結果はOKだった。
今すぐなら、ちょうど宿泊のお客様がカラオケに興じているのでお風呂を使って良いと。
じゃ、食べ終わったところだし、急いで行ってきちゃいます。ありがとう。
さつき荘の玄関に行くと、ご主人が遊めぐり手形を準備してくれていた。
「3タイプあって、まあどれでもいいんですが、手造りですが」と言う手形は、それぞれ特徴的な形。
枝に差し込む穴を開けたペン立てタイプ、下風呂ならではのイカのシルエットタイプ、髪をまとめるにもお役立ちの湯玉タイプ。全部素材は青森ヒバで、下風呂温泉の焼き印を押して、施設ごとに剥がして使う三枚のシールが貼ってある。
温泉巡りの後はお土産として持ち帰り、洋服ダンスに入れるも良し、自宅のお風呂に入れるも良し。ヒバの香りが楽しめる。
夫はイカシルエットを、私は湯玉をチョイス。
外に出るとさっき来た時に目についたさつき荘の入口に下げられていた赤ちょうちんに灯りが入っていた。
「これってやってるんですか?」と夫がご主人に聞くと、地元の人向けだけどやってるよと言う返事。
案の定彼は、湯上りはここにいるからと提灯を指差す。
もちろん私の方が長湯をするだろうという前提で。