私はゆっくり入っていたが、夫はとっくに上がって夕食を待っていた。
さつき荘の夕食は隣室に準備してくれると言っていた。
暖簾の柄が違う隣室に入ると、畳の上にお膳が用意されていて、夫は既に座布団に胡坐をかいていた。
料理が運ばれてくる。メインディッシュはぶりしゃぶだ。私がお風呂から戻ってくる前に夫がご主人にお酒は何がお勧めか聞いたところ、地酒は関の井の寒立馬だけど自分は諏訪の真澄が好きだって言われて両方頼んでいた。
海鞘の酢味噌和えなども出て、私は海鞘を食べるのは初めてだったけどとても美味しかった。
あれ? 目の前がイカ釣りの漁港なのにイカは出ないのかなと思ったけど、夫と後から考えて、集魚灯で夜釣りをするんだから新鮮なイカは夕食には出ないのかと思い当り、事実翌日の朝食の盆にはイカの刺身が乗っていた。
実はこれらさつき荘の料理はご主人の弟さんが担当しているものだった。
せっかく下風呂まで来たのだからと、できるだけ下風呂や大間など地元の食材を使うことを心がけてくださっているそうだ。
メニューは決まった物ではなく、その日手に入った中から良いものを選んでいる。
季節的には既にウニはほぼ終わり、マグロには早め、今年は不漁なこともあり、8月終盤の今はあまりこれと言う目玉は見つからないらしい。