七戸でリストアップしていた温泉は、東八甲田温泉、七戸あすなろ温泉、さかた温泉の三ヵ所。
その中で東八甲田温泉を最初の行き先に選んだのは、地図上で一番北側、つまりいまいる「みちのく道路」から一般道に降りて南下していく場合一番手前にあるからという、それだけの理由だった。
「凄いねー、これ、新幹線の駅?」
えっ、と夫が振り返る。
なんか何もないところにいきなりガラス張りの四角い大きな建物が建っている。大型ショッピングセンターぐらいの規模だが、がちゃがちゃした看板などの飾り気は無い。
夫は目を丸くしている。そりゃそうだろう。昔の鉄道に詳しければ詳しいほど、何でこんなところに突然巨大な駅が?って思うよね。
でも駅が近未来的に立派なだけで、周辺はまだ何もない。駅自体、賑わっているというふうでも無く、むしろ駅の駐車場が巨大な車置き場になっている感じ。やたらと車だけは沢山停まっていた。
しかし問題はこれからだった。
電話番号を入力して、東八甲田温泉という表示が出て、カーナビの導く通りに車を進めると・・・そこには何も無かった。
いや、空き地があった。「売地」とか「貸土地」という看板が立っている草ぼうぼうの。
もしや廃業?と焦ったものの、スマホのスマホのグーグルマップを起動したら場所が1ブロック位ずれてた。
なんだなんだ、脅かさないでくれ。ちゃんとあるじゃないか。
マップに従い移動すると、そこには日帰り温泉らしい建物と、その隣には「東八甲田温泉新館」と書かれたなんとなく工場の建物みたいな宿泊所があった。
幸い雨は上がっていた。