2.ぶどう狩り
我が家はせっかく南アルプス市まで来たのだから、せめて午前中は遊んで帰ろうと思っていた。
中央道は混むから、連休最終日、昼には高速に乗った方が無難だろう。
さあ、限られた時間、何をしようか。
秋に甲府盆地でしょ。
やっぱりぶどう狩りだよね。
山を下る途中で桃源天恵泉 白根桃源天笑閣という日帰り温泉を見つけた。
日本第二位の高アルカリ泉掛け流し。
気になる感じ。
一度は駐車場に車を入れたが、朝早すぎてまだオープンしていない。
パパはぶどう狩りの後に戻ってくるかと言ったけど、怪しいなぁ。
実は
南アルプス温泉ロッジのロビーにちらしが置いてあった中込農園という観光農園を目指していた。
ところが、ちらしの地図はあまりにも判りにくい上に、行けども行けども中込農園の農場はあるのに受付が見つからない。
農場は葡萄、サクランボ、桃などいくつかに別れて点在していて、どこかに味覚狩り専用の受付があるのではないかと思われるのだが。
適当に探し回っているうちに中込農園ではなく何故か田中園という農園の受付に着いていた。
いや、元々別に中込農園である必要は無かったのだ。
これも何かの縁と田中園に入ってみることにした。
帽子を被った品の良い奥さんが一人で店番をしている。
「あのう、ここはぶどう狩りは出来ますか?」
「食べ放題というのはやっていないのだけど、狩って購入していただくことはできますよ。試食は自由に出来ます」
今までは、ただ自分で取るだけでは詰まらないと食べ放題の処を選ぶことが多かったが、よく考えてみると試食が自由なら別に食べ放題に拘る必要はないのかしら。
「まあ食べ放題と言ってもそんなには食べられないんですよ」と奥さん。
確かに。
試食用にと出してくれた籠の中には、紫や黄緑の葡萄がどっさりと入っている。
もしかしてあれ全部食べて良いの?
「料金はいくらですか?」
「1キロで1,200円です」
「1キロでどのくらいの量ですか?」
「二房ぐらいですかねぇ」
確か中込農園のちらしでは食べ放題一人1,000円だった。家族四人で4,000円は痛い(実際は子供料金設定とかあるのかもしれないが)。
それにパパは果物嫌いでほとんど食べないし、だからと言って農園の外で待っていてもらうのもつまらないからなぁ。
これは狩りだけであとは試食の方が絶対お得だ。
「この場合、人数とかは関係ないのですか?、家族四人なんですけど」
「はい、どうぞどうぞ」
奥さんは葡萄畑の中に置かれた白いテーブルセットに試食用の葡萄を運んでくれた。
これはいいや。
奥さんの見ている前だと流石に試食もあまりできないけど、ここなら思う存分(こらこら)、それに葡萄の木の下に置かれた白いテーブルセットって何だかいいじゃない。