9.へそ湯
ミミミさんの車に全員で乗り込んだ。
本当にちょっとした距離だけど寒いし暗いので車はありがたい。
暗闇の中にスパニッシュ・コロニアル風の一風変わった建物がそびえている。
シルエットだけなら時計台の付いた学校のようにも見える。
白い柱、色とりどりのタイル、アーチ型の開放部を持つ回廊。
南国のリゾートホテルに来たような雰囲気だ。
これが
へそ湯。
以前は修善寺スパラシオという名前だったようだ。
もう日が暮れて真っ暗なので昼間とは雰囲気がかなり違って見えているかもしれない。
入り口を入って右手に浴室へ続く回廊があり、左手は食事どころになっているようだ。
正面にこれまたバリ風の不思議な飾り付けがあって、その奥に無料でインターネットのできるパソコンが並んでいる。
とりあえず受付を済ませてお風呂に向かった。
脱衣所も小綺麗だ。
特にひとつずつ磨りガラスで仕切られた化粧台がえらく洒落ている。
夜だがまばらに人がいる。
子供連れもいる。
今回は男性陣が子供たちを入浴させてくれたから、大人だけでのんびり入れるはず。
ポマトランドのウェブサイトで見ていたへそ湯は、黄土色の湯に見えたので、かなり強い濁り湯なのかなと思っていたら、夜の薄暗がりではほとんど無色透明にしか見えなかった。
もちろん昼間見たら、きっと黄色っぽいのだと思う。
先客はみな内湯にいたので、先に露天風呂に出てみた。
キャンプ場の隣の日帰り温泉だから、露天風呂もよくある岩風呂か何かだろうという先入観があった。
しかし、露天風呂は思っていたよりずっと広く、遊び心に溢れていた。
タイルの四角い浴槽が二つ、そして樽型の風呂がいくつか見える。
後から露天に出てきたyuko_nekoさんが、本当はいくつもお風呂があるのだが、冬季は掛け流しを維持するためにも一部分しか利用できないと教えてくれた。
そういう拘りはいいよね。
お客さん全てに理解を得るのは無理かもしれないけど、ぜひともこの方針を貫いてほしい。
確かに源泉は60度以上あるというが、露天風呂の湯温はかなり低かった。
外気温が低いからなのだが、入っていると温まると言うよりじりじりと冷えていく感じだ。
いつの間にかオタクの母さんとミミミさんも露天風呂にやってきて、いいねぇ、このお風呂とか言いながら和んでいた。
最後にえんぴつさんもやってきた。
内湯にいた他のお客さんもみんな露天風呂に出てきたので、樽風呂を含めて露天風呂は大盛況だった。
臭いにも肌触りにも特にこれというものは感じられないが、逆に主張しすぎるものもなく、ただのんびりと入るには良い湯だった。
子供がいないと楽よね~と思わずミミミさんやyuko_nekoさんとにんまり。
流石にしばらく入っていると寒くなってきたので、内湯へ移動した。
こちらは適温。
入って直ぐに温まる。
ぽかぽかと程良くのぼせてきたところで出ることにした。