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修善寺ポマトランドでウィンターキャンプ

3.修善寺の狭い道



 それからが大変だった。
 修善寺というと、私は子供の頃に一度来たことがある。
 いやいや成人してからもラフォーレ修善寺に来たことはあるが、修善寺の町中というのはたぶん子供の頃以来だ。
 だもので、温泉街の中がこんなに狭く入り組んでいるとは思わなかった。
 車一台がぎりぎり通れるような所を、ハイキングだか何だか、ディパックを背負った年輩の人たちがぞろぞろと列をなして歩いている。
 その間をぬって走っていると、正面から対向車が来て少しパック。ようやくすれ違ったかと思うと、またまた次の対向車が来てなかなか進めない。
 こういうのが大嫌いなパパは、もうこの時点で険悪な表情だ。
 ちょっと前までは、道が狭くて車で行きにくいというだけの理由で「温泉街」と名の付くところには決して近寄らなかったぐらいだ。

 蕎麦屋に迷わず着いたのがせめてもの救いだった。
 ちょうど能舞台を持っているという老舗旅館あさばの正面だ。
 目立たないが渋く品の良い作りの蕎麦屋だった。
 名は朴念仁と言う。


修善寺の道は狭い 12月でもまだ紅葉が残っている 何故かその狭い道に朝から沢山の人・人・人


 昼は11時にオープンし、駐車場は3台とガイドブックに載っていたが、ちらりと見たところ駐車場らしきものは見あたらない。
 一人だけ降りて、車を停める場所を聞いてみようと思った。
 ところががらりと戸を開けると、既に玄関先に数人並んで待っている様子がある。
 まだ11時を10分ほど過ぎたところだから、まさかこんなに混んでいるとは思わなかった。
 「車を停めるところはありますか?」
 店の人はちらりと外を見ると、思った場所が既に塞がっているのを見て取って、「店の前に一台分のスペースがあるからそこにつけてください」と指示してきた。
 これで車を停める場所がいっぱいだったら、苦労して細い道をやってきたパパは益々渋面になるところだ。
 店の外の張り紙には、「11時開店、その日の蕎麦が終わった時点で閉店」、店の中の張り紙には、「お子さま連れは静かに願います」、「店主が一人で蕎麦を打ち、調理しているのでお待たせする場合がございます」、などと敷居の高い文言が並んでいる。
 私たちの前に既に一組の客が並んでいたが、こちらも大人しく順番待ちの紙に記帳して待つことにした。
 そうしている間も次々に引きも切らずお客さんがやってくる。
 みんな黙って記帳して玄関の中や外に立って待っている。
 一人、「あのう駐車場は・・・」と聞いてきた若者がいたが、店の人に首を横に振られて、諦めて出ていった。
 およそ30分ばかり待っただろうか。ようやく名前が呼ばれた。
 座敷は奥だ。
 廊下の狭さからするとまあまあ広いスペースで、玄関の凝り方からすると洒落っけの足りない部屋ではあった。
 畳の部屋にぽつぽつと五つばかりのテーブルが置いてあり、それぞれに家族連れやカップルなどが座っている。
 食べているのは半数ほど。残りは注文して料理を待っているところと見える。
 窓からの景色はなかなか良く、まばらな竹林と赤く染まった紅葉が見えた。


蕎麦屋 朴念仁




1-4.蕎麦屋 朴念仁へ続く


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