3.修善寺の狭い道
それからが大変だった。
修善寺というと、私は子供の頃に一度来たことがある。
いやいや成人してからもラフォーレ修善寺に来たことはあるが、修善寺の町中というのはたぶん子供の頃以来だ。
だもので、温泉街の中がこんなに狭く入り組んでいるとは思わなかった。
車一台がぎりぎり通れるような所を、ハイキングだか何だか、ディパックを背負った年輩の人たちがぞろぞろと列をなして歩いている。
その間をぬって走っていると、正面から対向車が来て少しパック。ようやくすれ違ったかと思うと、またまた次の対向車が来てなかなか進めない。
こういうのが大嫌いなパパは、もうこの時点で険悪な表情だ。
ちょっと前までは、道が狭くて車で行きにくいというだけの理由で「温泉街」と名の付くところには決して近寄らなかったぐらいだ。
蕎麦屋に迷わず着いたのがせめてもの救いだった。
ちょうど能舞台を持っているという老舗旅館あさばの正面だ。
目立たないが渋く品の良い作りの蕎麦屋だった。
名は朴念仁と言う。