4.手鏡の忘れ物
途中でちょっと迷ったが、何とか無事にたけやま公園に着いた。
カナもレナもちび姫ちゃんと一緒にがっちゃんの車に乗せてもらっていたので、親が車を降りるときにはもうさっさと遊具のある方へ行ってしまっていた。
駐車場から見上げる嵩山は、紅葉まっさかりという感じだ。
追って遊具の方へ行ってみると、yuko_nekoさんが子供がとても喜ぶ公園だと教えてくれただけあって、吃驚するほど充実していた。
斜面には幼児用のアスレチックのようなカラフルな巨大遊具があって、大きな滑り台が二本、伸びている。
この寒いのに他にも遊んでいる子供がいる。
子供は元気だが、付き添いの親たちはみんなコートを着た背中を丸めて寒そうに震えていた。
ふとそこでレナが大変なことを思い出した。
「鏡を忘れてきた」
えっ?
「あの自分でラブカスを描いた手鏡だよ」
あああれか。昨日、薬王園の木工体験で作ったやつだ。
「どこに忘れてきたの!? 部屋を出るとき一通り見たけど何も残っていなかったよ」
「みんなで隠れたところ」
押入の中かいっ。
昨夜から何度も子供たちはあの中に隠れていたもんなぁ。あの座布団とか仕舞ってある処に置いて来ちゃったんじゃ流石に気づかなかった。
「・・・判った。お泊まりした旅館の人に聞いてみるからちょっと待ってて」
外は風の音が強かったので、車に戻って電話することにした。
花湧館にはすぐに繋がった。
たぶん受けたのは予約係だったらしく、事情を話すとフロントの方に回してくれた。
フロントで応対してくれた女性は、すぐに「あっ、私、その手鏡知ってますよ」と吃驚したように言った。
「昨日、薬王園で手作りした鏡ですよね。私、お子さんから見せてもらいましたよ」
あっ、じゃあ昨日の昼にお風呂の受付をしてくれた人だ。
「だからどんなのか覚えてますよ。忘れた場所を教えていただければすぐに探してきます」
「ありがとうございますっ」
見つかったら携帯に電話してもらうことにして、いったん電話を切った。
そして10分もしないうちに折り返し連絡があり、結局パパが一人で
四万たむらに戻って手鏡を受け取ってくることになった。
レナ、頼むからもう忘れないでくれ。