11.蕎麦屋バーチャルアイドルのヒミツ
食べ終わった頃、中島屋の小枝子パパが奥からあらわれた。
小枝子パパというのは、蕎麦屋のダンディな主人であらせられるのだが、以前は「小枝子」という女性名で「こんばんワ、小枝子です」などと若い女性を装ってネットに出没していたため、その正体を知らない犠牲者たちは、中島屋には重い撮影セットを軽々と操る美女がいるらしいと勝手な想像を思いめぐらせていたものだ。
実は架空のアイドルであった小枝子さんの名前は、小枝子パパが生まれたお嬢さんにつけたいと考えていた名前であったものだという(実際は事情により、小枝子さんという名前は使われなかった)。
そこでしばらくの休止後、ネットに復活したとき、彼は正体を明かして「小枝子(の父)」と名乗ることにした(何故括弧がついているかはさておき)。
ところが、当の小枝子さんこと、小枝子パパの実のお嬢さんが先日結婚されて、お子さんを出産されたことから、なんと小枝子(の父)さんはある日、小枝子(の爺)さんとなってしまった。
いやいや、父なのはあくまでも小枝子さんに対してで、お孫さんが小枝子さんではないのだから、小枝子の父で正しいのだが、ご本人や周りの人たちが茶化したこともあり、一部では「小枝子(の○)」さんとも呼ばれている(○の中にはお好きな字を)。
「もしかして・・・今日の参加メンバー、既に全員、中島屋で昼食食べてません?」と私。
「義満さんが一番乗りだったね」と小枝子パパ。
うーん・・・でも、まだ誰かに会っていないような・・・。
「takayamaさんだ」
そうだ、takayamaさんの姿を見ていないじゃん。
「ま、どっかのお風呂に入ってからあらわれるでしょ」と小枝子パパが言う。
最後に中島屋のおばあちゃんと、子供たちで並んで記念撮影させてもらった。
小枝子パパのお孫さんも一緒だ。
ぷっくりにこにこしていてかっわいいね。これはもう、小枝子パパが孫にめろめろになっちゃうわけが判る。
中島屋のおばあちゃんにしてみれば、曾孫なんだ。
やっぱりおばあちゃんのこの若さの秘訣は絶対四万温泉の効能だと思うのだが。