9.露天風呂 森のこだま
「うっわぁい」
それはもう素敵な露天風呂だった。
紅葉に染まった新湯川を少し上から見下ろすようになっていて、屋根はついているものの開放感も十分だ。
お湯はそれほど熱くない。
ちょっと加水しすぎだと思うくらいだ。
ひんやりした空気の中、川沿いの木々は橙色に染まり、川面を彩っている。
秋の終わりを感じさせる鈍色の空からは、ときおり儚い粉雪が降りてくる。
そして四万のお湯。
大好きなんだ、
四万温泉のお湯は。
草津より好きだと思う。
きしつく中に少しぬるぬるする感じもあって良い肌触りで、身のうちからぽかぽと温まってくる。
四万温泉で紅葉露天風呂を独占・・・。
もうこれだけで、上州まで来た甲斐があるというもの。
少し経つと若いお姉さんたちが数人どやどやと入ってきた。
掛け湯もせずにばしゃばしゃとお湯に入る。
うーん、ちょっと考えものだなぁ。
四万たむらには沢山お風呂があるから、もしかしたらたった今、別のお風呂に入ってきたばかりなのかもしれないけどさ。
少しばかり興醒め。
子供たちがパパを呼んだ。
男湯は下だ。
森のこだま露天風呂は二階建てになっていて、下が男湯、上が女湯なのだ。
パパの返事が聞こえた。
下を見下ろすと男湯の屋根の部分が見えた。
もしかしたらこのお風呂、男湯より女湯の方が眺めが上かもしれないな。
だってこんなに凄い景色なんだもの。
しかし、後でパパが撮影した男湯の画像を見てがっかり。
男湯は低い位置にある分、ちょうど脇の赤く染まった紅葉が湯面に映えて、それはそれで絵になっていた。
というわけで、どっちの方が良い景色かは、結局よく判らなかった。