海とビーチと
*子連れ沖縄旅行記*
エイサーの準備が整うと、揃いの打ち掛けに白ズボンの一団がぞろぞろと競技場に出てきた。頭に巻くサージは無くこれもお揃いの黄色いたすきを縛っている。
列の最後には二人だけ女の子がいて、華やかな色合いの膝までの短い浴衣を着ている。
司会者が、「エイサーと言えば今や太鼓エイサーが主流ですが、この本部町のエイサーは昔ながらの手踊りですので、みなさんの手拍子がないと始まりません」と口上を述べた。
三線のリズムに合わせて20人ほどの踊り手が輪になった。
そして廻りながら踊り始める。
実はテーマパークなどでも今までエイサーを見る機会は無かったのだが、ああいったところではパーランクと呼ばれる平たい太鼓を打ちならしながら踊ったりすると聞いていたので、この本部町のエイサーはむしろ内地の普通の盆踊りに近かった。
違うのはやはりチョンダラーの存在。
メンバーの中にチョンダラーと呼ばれる道化役が一人いて、おどけながらも列を整えたり観客を盛り上げたりと忙しく飛び回っている。そのだらけた衣装と奇抜な化粧に似合わず、チョンダラーは踊り手たちのリーダーなのだ。
三曲目になって、観客の中にも飛び入りで参加する人が出てきた。
地元青年会のOBや、幼児を抱いた母親、それにやっぱりさっきのカチャーシーおじさんが出てきた。さっきはペットボトルを頭に乗せていたが、今度は酒瓶だ。そうだろうと思った。
■左 チョンダラーと呼ばれるエイサーの道化役 ■右 いつの間にか観客も飛び入り参加して踊る本部の手踊りエイサー
闘牛最終戦は、今帰仁の誠小力と本部の輝竜花形の対戦だった。
正直、このひとつ前に行われた大関戦でがっかりさせられたのでまるで期待をしていなかったのだが、これぞ横綱戦という迫力の試合になった。
前半からずっと誠小力が押していたが、輝竜花形もとにかく諦めない。
沖縄の闘牛ではどちらか一方の牛が尻を向けて逃げ出した時点で勝敗が決まるのだが、押されても押されても輝竜花形は逃げない。
何度か柵まで追いつめられたが、それでも押し返して反撃した。
対戦時間13分弱。
もっと長く感じた。
最後についに輝竜花形がギブアップして逃げ出し、誠小力の勝ちが決まった。
この試合だけは最後まで手に汗握って見てしまった。
帰り道、何だかカーナビの調子が悪く、どうしても名護までの道が設定できなかった。
「まあいいよ。どうせもうよく知ってる道だから」
本部半島から名護までの道は沖縄で一番数多く通っているルートだ。
暗い海沿いの道を通っていると、パパが言う。
「名護から闘牛を見にわざわざ来るのはうちぐらいかと思ったけど、前後の車も闘牛場からずっと一緒に走っている。意外といるんだねぇ」
「今日のはお祭りだから無料だったけど、有料の大会も多いよ。闘牛ファンって結構いるんじゃないの?」
「そういえば名勝負のビデオとか売ってたもんな」
「そうそう」
ふと夜道に灯りが見えたので目をやると、道沿いにある亀甲墓の前でお参りをしている人たちが見えてドキリとした。