26.ヤドカリの足跡
砂に落ちたとたん、顔を出して逃げ始めるせっかちなヤドカリ。
なかなか殻から姿を出そうとしない慎重なヤドカリ。
いろいろなタイプがいる。
「ほら見て下さい、ヤドカリが歩いた跡、何かに似ていませんか?」
・・・タイヤの跡。キャタピラの跡みたい。
「砂浜で、この自転車のタイヤ跡みたいなのが見つかったら、その先にヤドカリが歩いているかもしれませんよ」
何故か隣のヤドカリをがっちりとハサミで挟んだまま出てこないヤドカリがいる。
仕方なく、挟まれたヤドカリは挟んだヤドカリをえっちらおっちらと引きずり始めた。
ようやく二番目に大きいヤドカリが顔を出して歩き始めた。やはり大きいヤドカリほど慎重だ。慎重でなければこの大きさになるまで生き延びられないのだろう。
「このヤドカリは足が速いと思いますよ。カタツムリの殻をかぶっているから」
なるほど。カタツムリの殻は軽いから移動が楽なんだ。一番大きいのなんてサザエの殻だもんな。これは重そう。
「カタツムリの殻は軽くて移動が楽だけど、そのかわり薄くてもろいんです」
人間の家と同じで一長一短だ。
一番大きいオカヤドカリは、体が青かった。まるでヤシガニみたい。