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海とビーチと
*子連れ沖縄旅行記*

25.天然記念物オカヤドカリの奇妙な事情








オカヤドカリを探すRyuさん



 蟹を追いながらビーチの外れまで辿り着いた。
 岩場になっていて、今度はそこでヤドカリ探しだ。
 「手分けして探しましょう。一人10匹以上を目指します」
 岩の上や隙間を懐中電灯で照らすと、ちょろちょろと動くものがある。ヤドカリたちだ。
 ヤドカリ自体は沖縄のビーチに来る度何匹も見るのでもうそんなに珍しくない。
 このヤドカリたちも昼間見るヤドカリより少し大きめだが、期待したほどは大きくなかった。
 動いているヤドカリをちょんとつついてやると、吃驚して足を引っ込めるのでその隙につまみ上げる。失敗すると足を引っ込めたところでそのまま岩の隙間に落っこちて取れなくなったりする。
 最初は何匹も見つかって、ちょろいちょろいと思っていたが、すぐに見えるところで動く影はひとつも無くなってしまった。バケツの中にはまだ10匹はたまっていない。
 懐中電灯で足下を照らしながら海側の岩場を登った。
 たまに動く影を見つけるけど、もうあまりこの辺りにはヤドカリはいないみたいだな・・・。
 気が付くとみんながいない。
 あれ? さっきまではすぐそこにいたのに。
 慌てて岩場を降りると、反対側の藪の上で懐中電灯の明かりが動いた。
 「そっちにいたの?」
 よじ登っていくと、パパとカナとレナがいて、さらに藪の奥にRyuさんの背が見えた。
 「こんなに大きいのが捕れたんだよ」とカナがバケツを見せてくれる。
 小さいのに混じって吃驚するような大きさのヤドカリが2匹ぐらいいた。大きいのはみんなRyuさんが見つけてくれたらしい。
 さらに藪から出てきたRyuさんは、目の前でもう一匹、最大サイズのヤドカリを見つけて捕ってくれた。
 「この一番大きいのは何歳ぐらいだと思う?」とRyuさん。
 「判らないかな・・・カナちゃんやレナちゃんよりずっと年上だよ。これは20年ぐらい生きている。このもうちょっと小さいのは7、8年ぐらい。
 名前はオカヤドカリと言って、国の天然記念物です。だから普通の人は捕ってはいけない。でも業者が捕まえてペットショップなどでも売られています。店で買うことができる天然記念物なんだよ。
 小さいのは昼間も出てくるけど、鳥に狙われたりするので大きいのは夜にならないと出てきません」

 天然記念物がペットショップで売られているなんて変だ。
 後で調べたらこのあたりにはいろいろ事情があって、天然記念物として指定される以前からオカヤドカリを捕獲販売して生計を立ててきた人たちがいたため、許可された指定業者のみオカヤドカリの捕獲が認められていると、こういうことらしい。
 ついでに言うと、オカヤドカリは沖縄が日本に返還される前に天然記念物に指定されたが、返還されてみたら希少動物だと思われていたこのヤドカリは沖縄本島では釣り餌に使われるほどうじゃうじゃいたと、こういうこともあるという。
 まあ経緯は理解できるけど、浜で沢山見かけるオカヤドカリを地元の人や観光客が捕まえるのは違反で、誰が捕まえたか判らないオカヤドカリをお金を出してペットショップで買うのはOKだっていうのはやっぱり理解できない。だって現実には、買ったオカヤドカリが指定業者の捕獲したオカヤドカリだっていうのは誰も保証できないって言うじゃない。
 私が捕獲したヤドカリの中に一匹、貝が混じっていた。
 なかなかヤドカリが見つからず焦っていたときに、動いているのを確認しないままそれらしいのをバケツに入れたことを思い出した。
 「お母さん、これは貝だから海に帰してやらないと死んじゃいますよ・・・」
 こりゃごめんなさい。
 Ryuさんは先にその貝を海に戻してきた。
 そして砂浜を平らにならして、そこに集めたヤドカリを一斉に放した。




バケツに集められた沢山のオカヤドカリ




5-26ヤドカリの足跡へ続く


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