18.ホタルを呼ぶ
右手の暗がりからまた蛍の光が見えた。
「そこにいるみたいですね。もしかしたら呼んだら来るかもしれないから呼んでみましょうか」
ホタルを呼ぶ?
ホー、ホー、ホータル来いって?
呼んだら来るの?
「ホタルが何で光るのか知っているかな? ホタルは光で仲間とお話しします。だから蛍の光を点滅させると、仲間がいると思ってホタルが近づいてきます」
子どもたちも真剣に聞いている。
Ryuさんはペンライトのようなものを取り出して、馴れた手つきで点滅させた。
何か点滅の周期がホタルを呼ぶ秘訣らしい。
「大人のホタルは二週間ぐらいしか生きられません。だからこのホタルもカナちゃんやレナちゃんが帰っちゃう頃にはもういないかもしれないね。
沖縄ではゴールデンウィークごろから10月ぐらいまでホタルが見られます。大きさは本土のホタルの半分ぐらい。今のシーズンにいるのはあまり点滅しないタイプだけど、ちょっと前まではもっと激しく点滅する種類のホタルも見られました」
説明している間も慎重にホタルを呼んでいる。
本当にふらふらとホタルが寄ってきた。
Ryuさんはすっと空中で手を握るようにしてホタルを捕まえた。
「うわぁ・・・」
拳が青白く光っている。
レナは光るホタルを渡されて吃驚してどぎまぎしているようだ。
カナも持たせてもらった。
ホタルの光は熱くない。白じゃなくて青白い。そしてこんなに小さいのに暗闇ではなんと眩しいこと。