17.夜の森の生き物たち
しばらく走った後、Ryuさんは車を停めてみんなを下ろした。
車のすぐ近くの木で「がさっ」という音がした。
「しーっ。コウモリがいますよ」
見ると少し離れた枝に何かがぶらさがっている。
逃げる気配はない。しきりと木の実を食べているようだ。辺りは暗いけれどコウモリの首回りが白い毛で覆われているのが判る。
しばらく眺めた後、オオコウモリは他にも見られる場所があるので次に行きましょうとRyuさんが即した。
次は木だった。
ちょうどオーストラリアで言う絞め殺しのイチジクのような木だ。ひも状の根が見上げるほど高い枝から垂れ下がっている。
「この木はがじゅまると言います。枝から根っこが出て来るんだよ。面白いでしょ。どんどん垂れ下がって家みたいになることもある。この木に住んでいると言われている赤い髪の子どもがいるんだけど知ってる?」
知ってるけどここは子どもたちに考えさせた方がいいだろう。
照れているのか、知らないという言葉も口に出せずにいるカナとレナ。
「キジムナーって言うんだよ。ぼくは見たことがないけど、今でも時々目撃例がある。見たっていう子どもがいるんだよ」
夜のガジュマルの木は本当に誰か隠れていそうだ。
道の脇に、懐中電灯に照らされて何か動物の目が光った。
「これは子猫だね」
なーんだ・・・じゃない。去年ヤンバルクイナについて調べたとき、野良猫がヤンバルクイナの減少に拍車を掛けているという現実を知ったはずだ。
猫はかなり小さい。
子どもたちはこちらへ呼ぼうと手をひらひらさせた。
「ドライブに来て猫を捨てていく人たちがいるんだ。可哀想だけど、あの猫も逞しく生きていくでしょう。むしろ猫にやられてしまう生き物の方が・・・」
Ryuさんの言葉の最後は聞き取れなかった。
「さあ、次へ行きましょう」