12.親切や思いやりはみんなを回りみんなを幸せにする
その後もカナとレナはしばらくターザンロープで遊んでいたが、そのうちにレナが「喉が渇いた。トイレに行きたい」と二つの欲求をいっぺんに伝えてきた。
「トイレは階段の上にあった。飲み物は自販機が見つかったら買って上げる」
へばっているレナをなだめたりすかしたりしながら石段を登らせていると、トイレから少し離れた東屋の下で、先ほどの幼稚園児たちが休憩しているのが見えた。
レナがトイレに入っている間に、ターザンロープを担当していた年輩の男の先生が「お母さん、お母さん」と私のことを呼んだ。
「二つ余っているのでお子さんにどうぞ。お母さんの分は無いんですけどね、ごめんなさい」
「あ、ありがとうございます」
渡してくれたのは、休憩中の園児たちが無心で吸っているチューチューだった。
チューチューというのは、細長い透明プラスチック容器に入っているシロップで、凍らせてさきっぽを切り取り吸い出して食べるあれだ。私も子どもの頃、夏によく食べたのを覚えている。
「なぁに? それ」とレナ。
「先生がくれたの」
炎天下の公園で、頂いたチューチューは持っている指が痛くなるほどよく冷えている。
「カナのところに急ごう」
「うん」