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海とビーチと
*子連れ沖縄旅行記*

9.野生マングース






 「次はオリオンビール工場に行く?」と私。
 「名護城が先でいいよ。子どもの遊ぶ場所があるんでしょ?」
 名護城(なんぐしく・なんぐすく)は今回の旅行で既に訪ねた首里城や今帰仁城と違って、世界遺産にも指定されていないし目立った観光名所というわけでもない。
 緋寒桜の季節だけは遠方からの観光客で賑わうようだが、日頃はむしろ名護市民の憩いの場といった雰囲気の場所だ。
 何で子どもの遊ぶ場所があると思ったかというと、マンションに備え付けてあった名護イラストマップの城跡の処に桜と展望台の他、滑り台やブランコの絵が描かれていたからだった。
 他の城跡同様、ひときわ高い場所にある。
 この城に関してはあまり詳しいことが判っていない。各地に按司(あじ)と呼ばれる支配者が台頭していた頃、ここは名護の按司の居住地として栄えたようだ。
 首里城のような復元された門や建物も、今帰仁城のような遺跡然とした城壁もない。
 ただ全体が公園になっており、一番上まで登ると市街地と名護湾を見渡す展望台になっている。





 町中を抜けて、川に沿って山の方へ車を走らせると、公民館のような建物と学校があって、それから道は上り坂になった。
 かなりくねくねとしているので後部座席のレナが気持ちが悪いと言い出した。
 このところ車に乗る前には必ずセンパアという子供用酔い止めを飲ませているのだが、効きが悪いらしい。
 車道は九十九折りだが、歩行者のために直線に登る石段もあるようだ。ところどころに小さな鳥居も見える。
 途中の左手に駐車場。そこを過ぎると道が二股に分かれるが、左側には工事中で通り抜けできませんとの表示あり。
 仕方なく右の道を登る。再び道は二つに分かれ、左は青年の家と書かれているので更に右に行く。
 気持ちが悪い、お腹が痛いとわめくレナに気を取られているうち、子どもの遊び場がどこだか判らないまま頂上近くまで登ってしまった。
 「あっ、なにあれ!!」
 誰が最初に見つけたのか。家族四人でフロントガラスの向こう、車道を横切って飛び出した二匹の動物を指さした。
 イタチのような茶色い生き物は二匹でじゃれるように走りながら藪の中に消えた。
 「マングースじゃない?」
 「まさか」
 「いや、あのシルエットはマングースだと思う。本物を見たのは初めてだけど」

 すぐ上が駐車場だったので、そこに車を停めてもう一度見に行ったが、既にマングースは藪の奥深く姿を消していた。
 一昨日も書いたが、人間の手で沖縄に連れてこられたマングースは、今は増えすぎて駆除対象となっている。
 人間は身勝手だ。
 自分も含めて。








5-10名護城跡で迷うへ続く


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