12.エキスポランドの名残
「えーと次はね、備瀬のフクギ並木」
「なにそれ?」
「フクギの並木があるのよ。一応この辺りでは著名な観光地のひとつなんだけど」
「それで何ができるの?」
「水牛の牛車とかあるけど・・・乗らないよね?」
パパは興味なし、という顔。いや、私も別に牛車に乗りたいわけじゃないが。
フクギそのものも名護の街路樹にもなっているくらいで珍しい訳じゃないけど。
「まあ通りがかりだからさぁ」
「・・・寄るだけならいいよ」
ここも正確な場所が判らなかったが、流石に観光地として知られているだけあって114号線を行くうちに表示が見えてきた。
美ら海水族館の手前を右折する。
ちょうどその角に寂れた遊園地の入り口みたいなものがあって、思わずパパに言ってしまった。
「これってもしや・・・」
「これってもしや?」
そこでパパも気づいたらしい。
「・・・あれか!!」
そうだ、きっと海洋博公園に以前あったと思われる遊園地エキスポランドの名残だ。
パパが今朝子どもたちに連れていってあげると約束していた幻の遊園地だ。
門の向こうは更地というか、駐車場みたいになっている。もちろん遊具のたぐいは撤去されているようで何も無い。
後部座席の子どもたちも運転席・助手席間に流れる微妙な空気を感じ取ったようだ。
「もしかしてあれが遊園地なの?」
「もう無くなったの? 無くなっちゃったんでしょ?」
いや、判れば話は早い。
遊園地のことは無かったことにしよう。
黙って車を走らせて、さっさと備瀬のフクギ並木へ行ってしまおう。