13.ヤンバルクイナ発見!?
ター滝からの帰り道は、カーナビに任せていた。
元来た道をそのまま国道まで戻るのかと思ったら、どこかで曲がり、気が付くと山の中とは思えない広く真新しい農道を走っていた。
表示を見ると、この先に果樹園があるようだ。
果樹園の収穫物などを運ぶためにこの道路はあるのだろうか。
道はくねくねと坂を上り、果樹園の入り口を過ぎ、それからまたくねくねと坂を下っていった。
何の気無しに助手席から窓の外を眺めていると、道の端を小鳥と言うには少し大きな濃い茶色の鳥がとことこと歩いていく。
え?
ええーっ
「あーっ、いたーっ、いたいたーっ、ヤンバルクイナ、ヤンバルクイナだーっっっ!!!」
興奮してだんだんと車の窓ガラスを叩く。
本当か?
本物か?
「停めて停めてーっ」
と言ったって、車は急には停まれない。
「無理だよー」
判ってる。判っちゃいるけど、今すぐ停めないと逃げちゃうよ。
今すぐ停めないと二度と見られないよ。
パパは可能な限り急いで車を停め、Uターンさせた。
でもヤンバルクイナは見つけたときからもう道の端の藪の近くだったし、車に気づく前から藪の方に向かって歩いていた。
たぶん僅かな時間のロスでももう見つからないに違いない。もうきっと草をかきわけて逃げてしまったに違いない。
車を降りた。
子供たちも続いて降りてきた。
そこは農道からどこかへ続くダートの分かれ道になっていた。
「ママ、ホントに見たの?」とカナ。
本当・・・だと思う。
だって、さっき道の駅ゆいゆい国頭で見た剥製とほぼ同じ様な大きさだったし、黒っぽいような茶色っぽいような体の中で、くちばしと足だけが赤っぽいような黄色っぽいような感じで目立っていた。
車が近づいているのに飛ぼうとしないでとことこと歩いていた。
きっときっとヤンバルクイナだと思うんだけど・・・。
思った通り、もういくら探してもその鳥は見つからなかった。
わさわさとシダ類が茂る藪は深く、とても奥までは探せなかった。
「ママだけ見るなんてずるいよ」
うん・・・私は自分よりカナにこそ見せてあげたかったんだけど・・・。
さて、絶滅が危惧されて国の天然記念物に指定されているヤンバルクイナだが、実は2000年以降、大宜見村では生存が確認されていないというのである[参考
ヤンバルクイナたちを守る獣医師の会]
やはり私が見たのは幻だったのだろうか。
(というか、カラスなど他の鳥を見間違えたのだろうか)
しかし、裏を返せば2000年までは確かにあの辺りに生息していたのだから、ツチノコやイエティなどと違って、可能性は十分あるのではないかと思っている。
そして、自分が見たのは、本当のヤンバルクイナだったのだと信じたい。
どちらにせよ、既に真相は闇ならぬ藪の中だが。