6.嵐の中の離陸
20時5分。座席に着く。
窓際三列及び通路を挟んでもう一席。
窓から見る空港の夜景の中、治まる気配のない激しい雨と頻繁に光る稲光。飛行機の中に音は聞こえないが、たぶん外では雷鳴も轟いていることだろう。
ところがこれで終わりじゃなかった。
予定時刻の20時10分を過ぎても飛行機は飛び立つ様子がない。
まあ、元々本当に10分遅れで飛ぶとは端から思っていなかったが。
私は聞いていなかったが、パパは機長が放送でこの機は10番目に飛び立つ予定だと聞いたらしい。
なんでもこの嵐で滑走路は一本しか機能していないらしい。
さらに10番目というのはあくまでも離陸する機として10番目であって、その間に着陸機がやってくればそちらが優先で入るから、実際に滑走路を使えるのは何番目か判らないという。
時々じりじりと移動はするが、いっこうに飛び立つ気配は無い。
だいたい10番目というのも怪しいが、前に9機もつかえていて、10分遅れというのもはなはだいい加減な推測時間だ。
乗客は静かだった。
狭い機内に閉じこめられているにも関わらず、まったく文句を言う様子もない。
うちの子供たちもいい子だった。
意外なほど。
それでも30分、1時間・・・のろのろと時間が過ぎていくうちに、パパはこんなに遅れるなら搭乗させるなよ。空港で待たされた方がよっぽどマシだと言いだした。
確かに・・・。
でも滑走路の順番待ちなんだから、いつ飛べるか判らない分乗客の準備だけは済ませたかったんじゃないの?
パパがついにキャビンアテンダントを呼んだ。
「10分遅れと言われて、その後10番目だって言われて、それからもう1時間近く経ってるよ。いったい何時に飛ぶの?」
キャビンアテンダントのお姉さんは「申し訳ありません。あと30ほどで離陸できると思いますので」と低い声で言った。
パパは飛べないのは仕方ないけど、情報はちゃんと客に流してねと伝えると、ほどなくして機内に「大変お待たせして申し訳ございません。現在、当機は3番目に離陸する予定となっております」と機長から放送が入った。
結局離陸したのは1時間20分遅れの21時20分だった。
1時間半ぐらいの遅れはざらかもしれないが、飛ぶ様子もなく機内に閉じこめられて待つのは辛かった。
羽田の夜景を後にして、嵐の中ぐんぐん飛行機は高度を上げる。
那覇空港到着は11時40分の予定。