カナとパパが部屋に戻っていったので、当初の予定通り本館のお風呂に入って帰ることにした。
今夜の泊まり客も何組もいるだろうに、何故か今夜はどこのお風呂もがらがらだ。
本館の内湯は、床や壁は大理石、浴槽の縁は御影石で、中はタイル貼りになっている。
お風呂の形は長方形で、湯口の辺りだけ岩が積み上げてある。
お風呂に入る前に髪を洗ってしまおうとシャワーを使ったら、あれ、このお湯の臭い、シャワーのお湯も源泉だ。
実はさっき子どもたちと露天風呂に入ったとき、張り出してある温泉分析書の源泉名が、
新飯坂源泉となっていたので、知らないでこの宿を選んだけどもしかしてここは自家源泉所有だったのかと思っていたところだ。
この宿を選んだの、正解だったかもしれない。
お湯は露天風呂のぬるめのところよりは熱かったが、それほど入りにくい温度ではない。源泉温度は熱いが、湯量を絞ることによって適温に保っている。露天風呂もだが、いっさい加水はしていないと明記されていた。
とろみがあってほんのりと石の甘いような懐かしいような淡い臭い。
きしきしわずかにべとつく無色透明清冽な湯。
湯口の周りの石は飛沫の析出物でとげとげに。特に湯口の奥のパイプの周りはハリセンボンみたいになっていた。