◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
12.宝の家の桜絶景露天風呂
温泉は露天風呂のみ。
しかしこの露天風呂、一見の価値あり。それはもう、内湯から続くドアを開けて外に出た途端、思わず感嘆の声を上げてしまうくらい。
もうね、一目千本はむしろこの眺めのためにあるような言葉。
今日見てきたどの景色より絶景。
今はまだ下千本しか開花していないので山は微かに染まっているだけだが、これが上中下、全山桜で山が着飾ったら、これはもう何物にも代え難い。
小ぶりながら雰囲気の良い岩風呂は開けた側に張り出すように作られた舞台にあり遮るものも無い。
ちょうど山に向かって右手の御簾の奥には今まさに満開の桜が一本あり、溜息の出るような造形を作りだしている。
はらはらと風に飛ばされて、一枚の花弁が湯面に落ちた。
その波紋すらも絵のようだ。
但し温泉についてはいまいち感が否めない。
熱すぎずぬるすぎずのお湯はわずかに黄色っぽく、浴槽の縁の岩はお湯の高さまで赤茶色に染まっている。湯口のお湯が跳ねるあたりはつぶつぶの析出物ができていてそうしたところに温泉らしさはあるにはあるが、プールのような塩素の臭いは強く、お湯そのものにもあまり特徴や鮮度が感じられない。
まあこの露天風呂はお湯はどうあれ価値は高い。
なんたって眺めが極上だから。
いつの間にか雨が止んだようだ。
岩の上のカタツムリがゆっくりと角を出して動き始めた。