◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
1.御芳堂と弘願寺
 奈良と言えば奈良時代。
  地名がそのまま時代名になっているからそんなイメージがあった。
  確かに到着して最初の日は春日大社や東大寺を巡って、聖武天皇の時代、平城京が都であった時代、そういう息遣いを感じたけれど、一方翌日の飛鳥は時代をさらに遡り、聖徳太子、天智天皇、天武天皇、まだ古代の半分伝説の中にあるような世界だった。
  そして今日いる場所。それは吉野の山。
  吉野はまた一気に時代を下る。
  ここは室町時代。
  後にも先にも一度きり、朝廷が二つに分裂し、南北朝に分かれたその時代の、後醍醐天皇の怨念とでもいうべき凄まじいパワーを感じる地。
  修験道の信者たちが一本、また一本と手づから桜の木を植え、いつしか山全体が春には花をつけるようになったそんな土地。
 
 山全体に霞がかかっているような朝だった。
  朝食は昨夜と同じ大広間で。広間の窓は私たちの部屋とは逆側、崖になっている方を向いていて、針葉樹の間に枝垂桜や山桜が見える。
  ご飯を食べてお腹いっぱいになったら荷物をまとめる。
 今日は手荷物以外は一つにして、ここから宅配便で自宅に発送してしまおうと思っている。
 
      
    桜山荘花屋の朝食と、朝食会場の窓から見る桜。天気はあまり良くない。
 
 
 チェックアウトの前に気になっていた桜山荘花屋の正面に建っている和菓子屋に入ってみた。ここは御芳堂という葛を使ったお菓子を専門に扱っている店で、葛の干菓子を試食させてもらったところ比較的あっさりとした品の良い味わい。ひと箱購入。
  「お店によって甘さが違うんですよ。試食して気に入ったところで買うといいですよ」と教えてくれる。
 それから御芳堂の隣の弘願寺へ。
 入口に地蔵尊や南無蔵王大権現と書かれた提灯が下がっている。境内は小さく庶民的な雰囲気だった。
 そのあとはいったん宿に戻り、チェックアウトと荷物の発送。
  この時初めてフロントに金峯山寺の勤行の案内が貼られていることに気付いた。
  長谷寺の朝の勤行がとても良かったので、「チェックインの時に気付いていたらなぁ」とつぶやいたら、宿の人が「もう間に合いませんね」と返してきた。
  横にいたレナが「もう正座は嫌」と意思表示。
  じゃ、気付いていても行かれなかったか。
 とにかく金峯山寺は吉野のハイライト。勤行は駄目でも絶対に行かなくては。