◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
亀石の前の道をさらに進むとお手洗いがあったので気分が悪いというレナを少し休ませた。
ちょうど右手のなだらかな斜面の先にこんもりとした木の生い茂る小山を背にして寺院の建物が見える。桜も植えられていて満開だ。
この寺は橘寺。聖徳太子の建立した七大寺の一つでご本尊も聖徳太子。
確か橘寺と言えば聖徳太子生誕と何か関係が無かったかと少し道を進むと、二体の頭巾を被ったお地蔵様と聖徳皇太子御誕生所と彫られた石碑が建っていた。ちょうど橘寺の門から真っ直ぐ斜面を下りた正面だ。
ふとこの時、橘寺や聖徳太子誕生地の石碑の道向かいが目についた。
簡易な木の柵で囲んだただっ広い空き地があったのだ。
奥にはやはり寺社らしい瓦屋根の建物が見えるのだが、その空き地がただの空き地らしくない。一部に礎石のようなものが見える。
何らかの遺跡かなと思ってマップを見たら、そこは川原寺跡となっていた。
川原寺とは薬師寺などと並ぶ飛鳥の四大寺のひとつと数えられた大寺院で天智天皇が創建したとされる。
しかし幾度かの火災の末、室町時代以降衰退して現在ではこの通り、僅かな礎石などが残されているばかりだ。
そういえばさっきの亀石の元になった争いは川原vs当麻だっけね。
この辺からようやくレナの体調が復帰してきた。
今までだましだましペダルを漕いでいたのが、何とか普通の速度で進めるようになった。既に思ったより時間が掛かっている。
次へ急ごう。
「この先はのんびりした田舎道だよ」とカナが地図を広げて言う。「レナ、車も来ない道だから安心して行けるよ。きっと景色もいいよ」