10.また会う日まで
こうして初めての子連れ自炊湯治の旅は終わった。
磐越自動車道は宝の山こと会津磐梯山の麓を通る。会津坂下ICに乗ったときからずっと正面に磐梯山がそびえている。福島ともこれでお別れだ。山形と福島の県境あたりを楽しんだ今回の旅は、長いようで短かった。
まるで昭和初期の長屋にタイムスリップしたような、古い木造建築、狭い6畳間。
隣室の話し声は襖を閉めていても筒抜けだし、電灯は薄暗くてしばしば点滅する。
ガスは10円玉を入れないと火がつかないし、冷蔵庫なんてもちろん無い。
温泉は一級品で、露天風呂は山桜咲く川沿い。
夜になると階段脇のベンチに一人二人と集い、知らないもの同士で話も弾む。
隣室の親父さんと、端の部屋の三人組からそれぞれ別れの時に言われた言葉。
それは、
「来年のこの季節に、また
滑川温泉で会いましょう」