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滑川温泉湯治日記1-12


12.謎の発疹

 部屋で一休みしてからパパが先に露天風呂へ向かった。
 やがてタオルを首から下げて戻ってくると、よく温まるし熱くなくて子供たちにもちょうどいいよと教えてくれた。
 日帰り客の入浴可能時間は午後4時まで。午後4時から5時半までが宿泊客の混浴露天風呂女性専用時間となる。
 これに併せて子供たち二人を連れていくことにした。
 既に待ちかねた女性が一人入浴していた。
 露天風呂の脇には男女別の簡素な脱衣所が用意されていて、女性用だけ入り口にカーテンが下げてある。
 お湯はパパが言うほどぬるくはなかったが、まあなんとかなだめて子供たちを入れることができた。水道のホースなどは見あたらないが、こちらで調節できないだけで既に少し加水されているようだ。

 前はお湯が透明だった記憶があったが、今にして思えばそれは、まさに一番風呂で鮮度の高いお湯だったからで、今この露天風呂は青白い美しい濁り湯だった。ただし色はついていても濁りは強くはなく、足先までうっすらと見える。入ってしまえば女性でも安心の混浴風呂とはいえない感じ。
 湯の花は前に内湯で記憶していたとおり、大きな消しゴムかすのような白いものがときどきうようよとしている。
 強いゆで卵みたいな硫黄の臭いがするが、刺激などは特にない。柔らかいお湯だ。
 しばらく入っているととても温まる。
 囲いもなく前川の流れ。やっぱり滑川の露天風呂は天下一品。

 子供たちが気に入ってなかなかあがろうとしないので、自分だけ先に着替えてしまった。
 そろそろのぼせるだろうとタオルを手に迎えに行けば、なにやらカナが胸元をかゆそうにしている。見るとびっくり。鎖骨のあたり一面にぼこぼこと発疹ができていた。ちょうど蚊に刺されて腫れたようなものが大小沢山あって全体的に赤くなっている。
 すわ伝染病か?
 まさか。
 小さい頃に水疱瘡は終わらせたし、風疹は予防接種をした。それにそれらの病気で出る発疹はもっと小さいはず。
「かゆいの? いつから?」
「このお風呂に入ってから」
「???」


旅館棟を出て、露天風呂へ向かう道

向こうに見えてきた小屋が、脱衣所になる。
あの手前が滑川の露天風呂だ。

青みがかった綺麗な乳白色の湯がたたえられている。


 とりあえず服を着せて部屋に戻った。
 パパに見せようと説明して服をまくり上げれば・・・あれ? 消えている。
 掻いたからか赤みは残っているものの、綺麗に発疹は消えている。
 何だったんだろう、あれは。
 滑川のお湯にかぶれたんだろうか。

 夕食はレトルトで簡単に済ませて、デザートに峠の力もち。
 夜にもう一度お風呂に連れていこうとしたら、レナは眠いと言ってそのまま寝てしまった。仕方ないのでカナだけパパと内湯に入ってきた。
 朝も早かったし、私もお風呂に入ったら寝るとしよう。
 8時前だけど、山の中は深夜のように暗い。


仲良く夕御飯を食べて、そのあとはデザートに峠の力餅。

長い長い初日だった。




2-1.つくしへ続く


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