◇◆赤倉温泉◆◇
子連れスキーと温泉旅行
午後は益々晴れていい天気だった。
「早く滑ろうよ」
子どもたちはそわそわ。
レストランを出るとさっきまでは片耳しか見えていなかった妙高山もミミズクのような両方の耳をぴんと立てている。
熊堂の中央クワッドを降りてすぐ左側に行くと、ほど良い斜度と巾のエレガントコース。
ここを何度か滑ってから反対側のパノラマコースを滑り、それから熊堂を離れてヨーデルゲレンデの方に向かった。
ヨーデルゲレンデは赤倉温泉スキー場の上下でも左右でも中ほどに位置していて、とにかくどこか余所のゲレンデのリフトを使わないと上ってこられない場所にある。
ヨーデルという名前の通り、ヨーロッパアルプスを意識した作りで、レストランやリフト乗り場もアルプスの少女ハイジを彷彿とさせる山小屋風の飾り付け。カウベルなんかが垂れ下がっていたりする。
ここのクワッドリフトで何度か上って滑り降りた。
平日なのもあるけど、赤倉は本当に空いている。
さっきのレストランでも思ったけど、先月の連休に滑りに行った群馬の草津国際スキー場の混雑が嘘みたい。快適なのは良いけどつぶれないかと心配になる。赤倉の温泉街だっていまひとつ活気が無いし。
今度はちょっと違うコースへ行ってみようとほぼ斜度の無い平らなゲレンデを漕いで渡ろうとしたときだ。
「見て、雲が動いている・・・」
今までくっきりと青空が見えていた頭上がにわかに暗くなってきた。
背後から靄のようなものが凄い早さで近づいてきて、私たちの横を走り、行く手へ回り込んだ。
あっと言う間に私たちは雲の中にすっぽりと入ってしまった。
「禁じられた遊び」のメロディーを甲高い調子で鳴らしながら圧雪車が通り過ぎた。
「これ、雲なの?」とカナ。
「そう、今私たちは雲の中にいる。外から見るとちょうどこの辺りは雲がかかっているはずだよ」
「ふーん・・・雲ってもっとふわふわしていると思った」
そうだね。遠くから見ると上にのっかれそうな気がするのにね。