8.晴れのち大嵐
さあ急いでキャンプ場に戻らねば。
なにやら雲行きが怪しい。
上九の湯では晴れていたのに、本栖湖が近づくに従って暗くなる空。
キャンプ場を目前にしてついにばらばらっと降ってきた。
しまった、雨だ。
土曜日の夕方にはキャンプ客も増えるかと、テントの横の駐車スペースにキャンプ用長椅子を出して場所取りしていたのだが、これがびしょぬれになっている。
タープも水が溜まり始めていた。
急いでタープの下に移動すると、益々雨は激しくなった。
明るいうちに夕食の準備をしようと思っていたが、洗い物にも行かれやしない。
通り雨ですぐやむだろうとたかをくくっていたのだが、どっこいこの雨はそんなに生やさしいものではなかった。
少し小振りになったかと思えば、すぐにざばーっと来る。
バケツをひっくり返したみたいだ。
雷鳴も轟き始めた。
昨夜も少し雷雨があったが、あれとは比べ物にならない。もう、すごすぎ。
我が家のタープはずいぶん昔に買ったダンロップの製品で、雨にあったこと自体数えるほどのせいか、まだまだ防水性などはしっかりしている。
だが、今時あまり見かけないシンプルな長方形の生地は、思いっきり水が溜まる。部分的にへこませて水を逃がしても、土砂降りで一度水が溜まると、たわみが出て次からはもう溜まる一方だ。
3分も経てば臨月の妊婦状態。
ぼよんと膨らんだ生地を持ち上げて、水を逃がしてやらないと、いずれ重みで倒壊してしまう。
最終手段は、一部のポールを短くして完全に斜面を作ることだが、これをやるとタープの下の有効領域が狭くなるので、実行は夕食が終わってからにしよう。
パパはシーズンオフになったら新しいヘキサのタープを買って来年に備えようなんて言っていたけど、既に手遅れ?
夕食はバーベキューの予定で、V字型コンロを使わなくて済むように、パパは昼間地面に穴を掘ってかまどを作っていた。
しかし・・・この雨でお手製かまどは単なる泥水の水たまりになっていた。拾った薪がビニール袋に入れてあったのを幸い、ぬれなかったのがせめてもの救い。
仕方ないのでタープの下でV字型コンロに火をおこした。
雨が激しくタープの下でもしぶきがかかるため、子供たちはテントの中に避難させた。
準備ができるまで、さっきもらった試食用の桃をかじらせる。
本当に甘くて美味しいよ。
カナは上の前歯が生え替わり中なので上手くかじれず、スプーンですくって桃を食べていた。